恋愛ワクチン 第百十二話 善と悪(17)

数えてみると、処女卒業から5~6回目のデートだろうか。
私の仕事がたまたま空いたので、その日は丸一日菜緒ちゃんと遊んだ。
そして少し時間も余ったので菜緒ちゃんを他県の自宅近くまで車で送ってあげようということになった。
車といっても1.2トンのトラック、例のマジックミラー号(もどき)だ。
あちこち連れまわして、きわどい露出撮影を楽しみ、興奮してきたらトラックの荷台でセックスする。
まさに移動ラブホ。
その話は措いておいて、ドライブの間、菜緒ちゃんと「トラウマの再演」について語り合った。
きっかけはというと、菜緒ちゃんが関係を持っている既婚者男性との近況を私が尋ねたからだと思う。
やっぱり気になる。
菜緒ちゃん「あの男性とはもう性的なことをするのは止めようと思います。彼もそこは同意していて、最初の頃のように私を恋愛対象として積極的に働きかけてはくれなくなった感じがします。以前のように電話やメールのやりとりだけをするお友達のような関係に戻れたら良いのですが・・」
マックさん「既婚者だし、自分の家庭を壊すつもりが無ければ、我に返ったって感じじゃないかな?元々は菜緒ちゃんの方からきわどい自撮り写真を送って火を付けたんだし、無理もないっていうか、そんなに悪い人じゃあ無さそうだね」
菜緒ちゃん「だんだん地元に近付いてきました。心がざわつきます」
マックさん「夢から覚めて現実に戻ってきた感じ?」
菜緒ちゃん「そうですね。△さんと一緒にいるのは、いつも家から離れた場所だし、△さんが私の家の近くに来ているっていう現実にとても違和感があります。不思議な気がします」
マックさん「心がざわつくっていうのは、地元が中学時代の教師に性的虐待受けてた現場でもあるからなのかな?」
菜緒ちゃん「はい。いくつかいつも会ってた場所があって、その近くを通るたびに苦しい気分になります。今走っているこの道、この時間帯がまさにそうなんです」
マックさん「ごめん、避けた方が良かったね。家まで送るなんて言うべきじゃ無かったかな?」
菜緒ちゃん「いえ、逆です。私自身、心の中で強くこれを望んでいます。たぶん私が△さんに『再演』に付き合って欲しくて、送って貰えるように無意識に働きかけたんだと思います。
確かに、菜緒ちゃんは「家まで送ろうか?」と聞いたとき、「本当ですか?!」と、とても嬉しそうな返事をした。
あれがそうだったのか。
菜緒ちゃん「既婚者の男性にも同じように『再演』に付き合って貰ったっていうか、中学時代の教師といつも会っていた場所に車を停めて、そこで同じような性的なことをしました」
マックさん「そうなの?じゃあ僕もその場所行こうかな?」
菜緒ちゃん「本当ですか?!(嬉しそうな声)じゃあ次を右に曲がってください」
菜緒ちゃんの家とは少し離れた公園へと向かう。
その人気の少ない公園の駐車場に車を停めて、中学の教師は菜緒ちゃんに色々奉仕させていたらしい。
公園に着いた時には暗くなっていた。
菜緒ちゃん「遅くなってしまいましたね・・もっと明るければ良かったんですが。これだと、ちょっと辛いかもしれません。せっかく私の『再演』に付き合って寄り道していただいたのにすみません」
菜緒ちゃんはとても不安そうな表情だ。
菜緒ちゃんが「再演」をしたいのは、教師との記憶を、既婚者男性や私と同じような体験をすることによって、上書き消去したいという欲動からなのだろう。
しかしこの暗闇の中では、不安が強まって、新しい体験の方が負けてしまう。
それなら撤収したほうが賢明だ。
そういう戦略的なもののようだ。
マックさん「いいよいいよ、とりあえず場所が解って、菜緒ちゃんを理解する材料が増えたしね。また明るい時間に出直して来よう」
菜緒ちゃん「ごめんなさい・・」
公園の駐車場から離れて車を走らせていると、菜緒ちゃんが再び口を開いた。
菜緒ちゃん「実は・・今私の中でとてもラブホテルに行きたい気持ちが湧き上がっています。ほとんど『今ラブホテルに行かなければならない』というくらい強烈なものです。」
そういえば、菜緒ちゃんは前から「△さんとラブホテル行きたいです」と言っていた。
菜緒ちゃんとは、ジオラマアパートや別荘、混浴温泉でのデートばかりだった。
まだラブホには行っていない。
ラブホというものに対する好奇心からかと思っていたのだが、そうじゃなかったのか。
菜緒ちゃん「既婚者の方とは、その教師と行った同じところでは無いのですが、この近所のラブホに行きました」
マックさん「それもやっぱり『再演』が目的?」
菜緒ちゃん「たぶんそうです。だけど、中学教師と行ったラブホに今、△さんと行ったら、自分がどうなってしまうのか、すごく強いフラッシュバックが起きてしまったらと思うと怖いです。それでも自分の心の中に『ラブホテルに行け、行け』と強くそう仕向けようとする何かがいます」
マックさん「面白い。僕が勝つか、その中学教師の亡霊が勝つかってことだね。良かったら今から行ってみよう」
菜緒ちゃん「よろしいんですか?・・それじゃあ、この道をまっすぐ行ってください」
(続く)

過去記事リンク→(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16)

このカテゴリーの関連記事

  • 外部ライターさん募集
  • ラブホの上野さん
  • THE SALON
  • join
  • ユニバースサポート