林真理子「花探し」を再読するA氏

1.「花探し」

花探しとは、1999年に週刊新潮に連載された林真理子の愛人小説である。

2018年現在、古本であればネット書店等で1円で販売されている。

主人公は29才の「舞衣子」で、バブル崩壊後の不景気時代を生きるプロの愛人である。

この小説における特徴は、主人公の感情描写の乏しさであろう。

金銭のやりとり等に関する主人公の感想めいたものはあるが、感情の大きな動きがあまり読み取れない。

つまり彼女は、理論的、職業的に振る舞っているという事になる。

むしろ、感情の動きの描写される対象は、男性(愛人を囲う側)が中心である。

更に、囲う側の男性については、職業・家庭環境等が詳細に記されているのだが、舞衣子についてはそれらの情報が殆ど無い。

愛人に親和性の高い職業的愛人の心性がたくみに描写されていると考える。

A氏は、この本を読んで、愛人生活にちょっと憧れた。

ただ、舞衣子が年をとった時にどうなるのか、少し心配になった。
 

2.舞台

舞台は主に東京なのだが、2018年現在、現存する飲食店等が数々登場し、興味深い。

A氏の知る限りでの推察も含むが、以下の通りである。

・ガーデンヒルズ
・帝国ホテル
・サバティーニ?
・白百合?雙葉?
・キャンティ?
・ホーマット?
・目黒エンペラー?
・ペニンシュラ
・ヒルトンシーホーク?
・ド・リル・トーキョー?
・ラ・ボエム(白金)
・コートドール?
・現六本木ヒルズ界隈
・アマンド
・ホテルニューオータニ
・パークハイアット東京?
・シェ松尾?
 

3.小説からの引用 ~男性の扱い方

小説の雰囲気をお伝えするため、久々に読んで印象に残ったライン(一節)を抜き出してみる。

「男というのはたいていそうだ。女が黙っていると勝手に解釈してくれる。もちろんいい方にだ。だから美しい女は、決して多弁であってはならない」
→ そうかもしれない。

「舞衣子はそれ以上何も言わない。男が感動に浸っている最中は、余計な反論をしない方がいいと経験で知っているからだ。」
→ その通り。

「神谷は持ち前の磊落さ、というよりも、背景を持たない金持ちの男特有のだらしなさで、舞衣子のことを大っぴらにしていた。」
→ そういう男性もアリだと思う。憧れる。

「ゴルフ場を二人でまわる男女は、恋人同士だと人に言い触らしているようなものだ。スポーツクラブもそれと同じで、一緒に来ている男女が無関係のはずはない。」
→ ゴルフデートは憧れである。皆さん練習お願いします。

「この笑顔と「ご縁があったら」という、そっけない言葉に、たいていの男は飛びつくことになっている。」
→ その手には乗りたくない。

「権力のある男ほど、女のこうした無知で無邪気な質問が大好きである。」
→ 権力はあまり無いが、確かに無知で無邪気な質問をされると、知っていることは沢山話したくなってしまう。

「舞衣子が属しているのはいわば裏社交界の世界であって、正式なところへは妻たちが行く。ひとりで、華やかな席に招かれるというのは、実はめったにないことなのである。」
→ 専業愛人はそうなのかもしれない。だがクラブには、兼業またはアルバイト的愛人のほうが多いと思われる。

「ー品定めをされているのだ ーそれは決して嫌な気分ではない。どこから見られようとも男に失望を与えない自信があった。」
→ A氏も女に生まれて、こんな一流愛人としての経験をしてみたかったと考えている。

「ほらと、わざと行儀悪く足を蹴るように上げた。長めのワンピースを着ていたが、膝から下ははっきりと見えたはずだ。」
→ これもしてみたい・・。A氏がやっても、何か変な病気が発症したと思われるだけなので、やらない。

「ほら、きたと舞衣子はすっかり嬉しくなった。男がありきたりの、定石どおりの行動をとってくれると舞衣子もぐっとやりやすくなる。」
→ 変に衒わず、ありきたりのほうが親切ということか。

「どれほど金や権力を持っていようと、皆ありふれた言葉を口にし、自分を乞うてくるではないか。多少バリエーションがあるものの、言うことはみんな同じだ。ー寝て下さいー」


キリがないので止めるが、テクニック集としてまだまだ使えるのではないかと思う。古い本であるが結構面白いので、もし興味を持たれた会員さんはぜひ読んでみてほしい。
 

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