しりとりで綴る交際倶楽部奮闘記9 前編
スクールビキニ→2泊3日
未だに交際スタイルが定まらないジョー。
それでもタイプの子がいればオファーしてしまうし(数は多くないですけど)、辛うじて?繋がっているお気に入りの子からお誘いがあれば断ることはできない。
会えば恋だ愛だと騒ぎ立て、必ずしも札束でパンパンになっている財布ではないのに(「パン」くらい)、暗証番号なしのATM 化してしまっている。
それでいて目的の一つであるはずの魅惑的な肉体をマックさんの爪のアカほども堪能してはいない。
何をどうしていいか分らないからだ。
とは言えというよりだからこそというべきだろうけれど、彼女たちを旅行に誘うのは、旅先でならもう少し、自分が思うように交際をコントロールできると思うからだ。
実際はその逆でいつも以上に醜い結果になるのだけれども、学習能力が低いジョーは同じことを繰り返してしまうのである。
愛しのナナ姫は今ハノイを拠点にして活動している。ワイン関係の仕事だとは思うけれど、詳細は教えてくれないので(そもそもジョーも聞かないし)何をしているかは具体的には分らない。
日本にも度々帰ってくるようだけれど、日本滞在中は他のパパの接待?に忙しいから、ジョーまで順番が回ってくることは稀である。
そこで仕事にかこつけて昨年末、こちからハノイへ会いに行くことになった待ち合わせはメトロポールハノイ 。
良くも悪くもベトナム近代史と共にあるホテルだ。
ベトナムは経済成長著しいからもっとスマートでハイグレードなホテルもあるのだろうけれど、クラシカルでフレキシブル対応するホテルとしてはベトナムだけでなく、世界的に見ても定評があるとジョーは思っている。
(閑話休題。突っ込まれる前に自分突っ込んでおくと「じゃ、お前世界のホテルを知っているのか?」と言われれば、もちろん知りません。そもそもここまで「クラシカル」だの「フレキシブル」だと横文字多すぎ。分かっていて使っているか怪しいね。)
ジョーがプールサイドのバーで「チャーリーチャップリン」(チャップリンは新婚旅行でここに宿泊した)というマティーニとジンベースのオリジナルカクテルを啜りながらややあってナナ姫登場。
いでたちは鮮やかな白ののワンピースにベトナムの国花であるハスの花があしらわれている。
ジョーを認めるとナナ姫は手を振りながら席に近づいてくる。
ナナ姫に対する普段のジョーの気持ちは愛憎が複雑に入り乱れているけれど、いつもこの瞬間にやれてしまう。
「元気そうだね。ここで会えて嬉しいよ。」
「僕も嬉しいよ。何飲む?」
「ジョーちゃんは何を飲んでいるの?」
「チャリ〜チャップリン」
「じゃあ、私もそれで」
ナナ姫が手を挙げると、マネージャークラスの白人男性が注文を取りにやってくる。
二人は旧知の仲らしくなんとベトナム語で挨拶を交わしている。
注文を取り終わった後、ジョーは聞かずにはいられない。
「姫、ベトナム語喋れるの?」
「まだ少しだよ。今の彼に先生を紹介して貰ったの。同じ先生なんだよ。『僕よりも上達してますね』と褒められちゃった」
とナナ姫。
ジョーの方はと言えば、色々と妄想が広がる。
やっぱり姫はジョーの手には余る女性なんだよなあ、と心の中で独り言ちる。
市内の喧騒とは隔離された高級ホテルのまだ閑散としたプールサイドで白人の子供達のたてる水飛沫と歓声を聴きながら、ナナ姫を前にして物思いに耽るジョーであった。
「ジョーちゃん、お腹空いてない?」
「ランチはまだだから、何か食べたいね」
「ここでも良いけど、美味しいフォーのお店があるんだけど、行かない?」
「いいねえ、フォーは大好き」
「じゃあ、決まりだね」
一旦部屋に入り、姫はジーパンとT シャツに着替えて出発。
玄関ロビーでボーイに何やら声をかける(もちろん?ベトナム語)。
玄関前にシクロがやってきて二人で乗り込む。
街に繰り出すとそれまでの静寂が嘘のように車で溢れ、人々の喧騒に包まれる。
ジョーがハノイにやって来たのは20 年ぶりだが、その時の記憶が一気に甦る。
あの時もシクロに乗って市内をあちこち廻った。
当時はシクロはどこへでも行ける市民の足でもあったけれど、交通量が増え、今ではその範囲は制限されているそうだ。
基本旧市街内で、観光客用の乗り物になったという。
出発してすぐに目の前にハノイのランドマーク?であるホアンキエム湖が広がる。
20 年ぶりのそして2 度目のハノイなのに何か懐かしい気分になる。
というのもジョーは中学生時代「前世占い」なるものが受けたことがあって「前世はハノイの王族のひとり」というご宣託を頂いたことがある。
20 年前もホアンキエム湖を前にして「俺、やっぱり前世はここにいたじゃん」と思ったが(苦笑)、又しても同じ感覚に襲われた。
我ながら思い込みの激しいジョーである。
やって来たのは旧市街の路地を入った一角にあるお店。
ナナ姫が紹介する店だからもっと小綺麗な店を想像していたけれど、観光客は決して立ち入らないハノイっ子御用達の店である。
味は間違いないのだろうけれど清潔とは言い難く、軒先で銭湯にあるような桶?に座り、プラスチックのお椀を手に持って屈んで食べるスタイルの店だ。
ナナ姫がわざわざ着替えたのも合点がいった。
店主である?おばちゃんとは顔なじみのようで、何やら言葉を交わしている。
そしてナナ姫のオススメに従ってチキンのフォーを注文。
カゴに山積みにされているパクチーを素手で入れているのは気になったが、味は例えば東京で食べるものとは全く別物だ。
もちろん美味しい。
ナナ姫と言えば「ンゴーンクワー」(ベトナム語で「美味しい」)を連発しながら一心不乱にフォーをすすっている。
そしてナナ姫のその美しい横顔を見ながら改めてジョーは思うのだ。
「この人は一体何者だ⁈」と。
ジョーの頭は「?」マークで一杯だ。
同時にこの時ほど、ナナ姫を愛おしく感じたことはなかった。
地獄の道は甘美な花が敷き詰められていて簡単には抜け出せないのだろう。
一旦ホテルに戻り、プールでひと泳ぎした後、夕食は市内のベトナム風フレンチレストランに出掛けた。
メトロポールにもフレンチはあるけれどサービスや味はともかく値段が「ここはパリか?」になるので(特にワインを見境なく抜くと「パリ以上」になる可能性がある)ナナ姫に別のフレンチをリクエストしたのだ。
ナナ姫もジョーの意を汲んで?コンシェルジェを通じてお店の予約をしてくれた今度の移動はタクシーで。
ハノイ駅近くにある路地裏の店である。
外観も内装もそれなりにおしゃれであるが、メトロポールのサービスを基準とすると対応は今ひとつだ。
それでもお味は良かった。
そもそもジョーはフレンチを心の底から美味しいと思ったことのない田舎者だが(特にハト。食用とはいえ、ハトって食べるモンじゃないでしょう?)ここのフレンチはベトナム風にアレンジされているのかジョーの口に合う。
値段も東京で食べる半額くらいで(ベトナムにしては超高級ですが)お財布にも優しかった(ナナ姫に使ったお金は8桁を突破。こういう状況で数万円いや、数千円をケチるなら、先にケチるところがありますな)。
ナナ姫はワインリストには不満があるようでしたが、「やっぱりここ美味しいね」と一言。
店主?も席まで挨拶に来てやっぱりここでもベトナム語で言葉を交わしていた。
ジョーは何人目のパパだ?本当のことを知ったら素晴らしい料理をリバースしそうだったので、聞かなかったけど。
ホテルに戻った後は再びプールサイドのバーへ。
数杯グラスを傾けた後、部屋に戻り、ナナ姫とは久しぶりのお楽しみタイムだ。
ジョーがシャワーを浴びた後、バスローブに着替えてナナ姫を待っている間、バルコニーに出て通りを眺めた。
生ぬるい空気が頬に伝わり、通りの喧騒が耳に飛び込む。
日常と非日常が交差するこの瞬間がジョーは好きだ。
するとシャワーを浴び終えたナナ姫もバスローブ姿でバルコニーへ。
どちらからともなくキスを交わし合う。
ジョーの好きな舌を絡め合う全力のキスだ。
本当はこのままここで立ちバックを決めたいのだが、ハノイの留置場に連れて行かれる覚悟はない。
バルコニーへと通じる扉は開けたままベットへとなだれ込んだ。
ナナ姫のバスローブを脱がせるとジョーがプレゼントしたラペルラの下着。
美しくそしてエロい。
脱がせるのが惜しいので、ショーツをずらして既に十分に潤った姫の秘部へ控えめに(涙)起立したジョー自身を挿入。
そしてあっという間に(苦笑)果てるジョーであった。
その後はベットでピロートーク。
「ジョーちゃん、またハノイに遊びに来てよ」
「しばらくは難しいなあ。新規事業にてんてこ舞だし、来月はヨーロッパに行く予定があるしね」
こういう発言はナナ姫の前では禁物であることは身に沁みているはずなのに、1戦交えて弛緩していたので、うっかり口に出してしまった。
「えっ、ヨーロッパ?どこ?」
すぐにナナ姫が反応したので、ジョーも正気に返ったが時既に遅し。
「ベルリンとブリュッセル。中学生の同級生がダブリンに居るから寄ろうかなあと思っているけど」
「ブリュッセルに行くならパリで待ち合わせしようよ!パリは今スト中だけど、来月なら終わっているだろうし、スト中ならスト中で楽しめるよ。ねえ、いいでしょう?」
ダメって言えるわけがない。
という訳でパリでの再会となりました。
その顛末記は後編で。
業務連絡
マックさん
お題の「2泊3 日」に触れていませんが、ナナ姫との旅行は「2泊3 日」が限界という意味です(苦笑)。
それなのにパリでは間を挟んで合計5泊してしまいました(苦笑2)。
マックさんのことですから既に「か」の原稿を用意されていると思います。
後編アップ前に先にアップされても構いません。今後ともよろしくお願います。