ストレスの少ない性感染症対策(実践編)
性感染症が増えています。前回および前々回は、中高年男性の性感染症が他の世代よりも増加傾向が強いことを厚労省の公開データで紹介しました。このような状況でもパパ活ライフを楽しめるよう、最終回では、ストレスの少ない性感染症対策について考察します。
《「自分だけ大丈夫」なはずはない》
さまざまな性感染症が2015年以降に増えていますし、パパ活プレイヤーは性的にアクティブ(たぶん)ですから、パパ活における性感染症リスクはゼロでは無いです。冷静に考えると何かしなければいけないのに、“自分だけは大丈夫”と思って何もしない人が多いのではないでしょうか。それ、正常性バイアスの罠にハマっています。
正常性バイアスを意味する「Normalcy Bias」は、他にも「正常化バイアス」や「正常化の偏見」など、さまざまな訳があります。わたしのお気に入りは「正常という偏見」。災害が起こると、災害の状態が現状で、それまで正常だったことが“偏った”状態に変化します。そのような変化を脳が受け入れられず、危険な状況でも“自分だけは安全”と思い続けることが正常性バイアスです。地震や噴火の多い日本では災害心理学の世界で研究が進んでいるのですが、パパ活と性感染症にも合致すると考えています。
《正常性バイアスの典型的なパターン》
正常性バイアスの一つに「変化の見落とし」があります。大雨が続く中、崖の中段から水が流れているのを目にしたのに、その意味を見落とし、地滑りに巻き込まれてしまったというのは典型的なものです。パパ活でいえば、初めての女性とコンドームを付けずに関係を持ち、前にもあったから大丈夫だろうとタカを括っていたら、性感染症を共有してしまった、という感じですね。
では、なぜ変化を見落とすのでしょうか。大きな災害は脳みそにとってあまりにもストレスフルで、理解のキャパを超えてしまって受け入れを拒否し、前兆となる変化を無意識のうちに見落としてしまう。これが災害心理学的観点からの説明です。
ビジネスの世界ですと、トレンドの変化に心のどこかでは気づいていても、これまでの商売が通用しなくなると考えるのは大きなストレスとなり、脳のキャパを超え、受け入れを拒否し、結果として事業転換に失敗したというのがよくあるパターンです。
《考えることが脳のストレスになる》
性感染症は基本的な対策をすればリスクが激減し、パパ活ライフを心から楽しめるようになります。若い世代であれば脳みそが柔軟なので、きちんと教育を行えば、性感染症のリスクや対策の重要性を理解してくれます。でも中高年世代は現状への固執が強く、変化を考えることが脳みそのストレスとなり、自分が感染したらどうなるかというリスクシミュレーションが本能で拒否されてしまいます。
最悪の状況を考えることがストレスとなり、脳のキャパを超え、受け入れを本能的に拒否するところがポイント。脳みそに与えるストレスの少ない、中高年に適した「基本的な対策」の潜在的なニーズが高まっているのです。
《小学校の避難訓練が優れているところ》
考えることがストレスで障壁になるのですから、中高年向けの性感染症対策は機械的に行動できるスキームが必要です。ここでお手本になるのが、小学校の避難訓練。災害について細かく教育するより前に、アラートが出たら自動的に避難することを何回も繰り返し、身を守るすべを身につけさせます。「自動的」と「繰り返し」がキーワードで、これによって小学生でも対処できるようになるのです。
さて、ようやくコラムの本題がやってきました。ストレスの少ない性感染症対策は、正常性バイアスの罠に陥らない、深く考えずに実行できる対策、すなわち「自動化」と「繰り返し」がキーワードになります。
《ストレスの少ない性感染症対策》
ずばり、習慣付けすること。例えば性感染症対策に欠かせない検査、定期的に検査して早期に治療すれば性感染症は怖くありません。年に何回も行くのは面倒そうですけれど、「この時期に行く」などルーチン化する方が、「危ない関係があったから」という理由で行くよりもストレスが少ないです。わたしの場合、特定項目を定期検査することに加え、セット割引があれば必ず受けることにしています。
補足します。性感染症検査を主としている一部のクリニックでは、特定の組み合わせで検査すると割引を受けられることがあります。パートナーからクラミジア感染を告白されて検査しに行ったら、“いまなら淋菌がセットで安いですよ”とオファーされる感じ。ほとんどファーストフードですね。有効期限が迫った検査キットを使い切ろうとしているのかな。幅広く検査した方が安心ですから、オファーがあったら何も考えずに受けています。
コンドームはコロナ禍のマスク、自分が感染しないようにするのと同じくらい、相手に感染させないためにあるという意味で共通する部分が多いです。ノーマスク軍団のように、装着していない人間が大きな顔をするところも同じですね。
女性視点に立つのであれば、コンドーム装着は機械的な要求が効果的。装着しないで「事」に進もうとする男性は、あれこれ言われると理解するよりも先にストレスが増えてしまうから。機械的に実施する小学生の避難訓練と同じです。
最後に正常性バイアスの観点から一言。性感染症リスクの高い男性は無意識のうちに情報を避けるので、本コラムを読みません。見方を変えると、読んでくださっている方は心のどこかで性感染症を意識しているので、読まない人たちよりもリスクが低いと言えるでしょう。
深く考えると脳みそが疲れるので、軽く意識するくらいにして、機械的にコンドームを装着し、定期的に性病検査する、これがパパ活を楽しむためのストレスが少ない性感染症対策です。
「ストレスの少ない感染症対策」はこれでお終いです。最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。