恋愛ワクチン 第百十三話 善と悪(18)
問題のラブホテルに着いた。
たまたまなのだが、菜緒ちゃんは中学時代の学生服を持参していた。
今日の露出撮影の衣装にしようとマックさんが持ってくるように頼んだものだが、これ着てラブホ行けば、完璧な「再演」だ。
そういえば、最初の頃に菜緒ちゃんは学生服のほかに中学時代の部活のユニフォームやら、いろいろ持参していた。
あれも「再演」の欲求ゆえだったという事か。
マックさん「この制服着てラブホ行ったりもしたの?」
菜緒ちゃん「いえ、それはさすがに無かったです」
マックさん「首輪持ってくれば良かったなあ。ドッグランで全裸の菜緒ちゃんを四つん這いにして歩かせる撮影に使ったやつ。あれ付けてリードを僕が持って、その上から制服を着てラブホ行けば楽しかったのに」
菜緒ちゃん「それは強烈に上書き出来るかもしれませんね(笑)」
車内で学生服に着替えて、車を降りてラブホの入り口に向かう。
マックさん「この制服って、この辺の地元の中学のだよね?」
菜緒ちゃん「はい。ですけど、学生証持っているので、何か言われたら年齢証明できるから大丈夫ですよ」
パネルで部屋を選ぶタイプのラブホだ。
菜緒ちゃんに記憶に残っている部屋があるか選ばせる。
何年も前のことで記憶がはっきりしないようだったが、それらしい部屋を選んで入室した。
マックさん「どう?この部屋覚えてる?」
菜緒ちゃん「分らないです・・リニューアルしたのかもしれません。お願いがあるんですが・・」
マックさん「何?」
菜緒ちゃん「教師としていたのと、なるべく同じシチュエーションでしたいのですが、いいでしょうか?」
マックさん「もちろんいいよ。最初はどうするの?」
菜緒ちゃん「最初にお風呂にお湯を張って二人で入りました。教師は先に湯船に浸かっていました。」
マックさん「なるほど」
菜緒ちゃん「お湯を張りますね」
マックさん「僕はちょっと部屋を見てるね。なかなかいい部屋じゃないか」
しばらくしてから浴室に戻ると、菜緒ちゃんが立ちすくんでいた。
呆然とした様子で明らかにおかしい。
マックさん「大丈夫?菜緒ちゃん」
駆け寄って抱き寄せる。
瞳が涙で潤んでいる。
菜緒ちゃん「大丈夫です・・ごめんなさい」
マックさん「ひょっとして解離症状起きちゃった?」
菜緒ちゃん「そこまでは行ってないです」
菜緒ちゃんを抱きかかえるようにして浴室から出て、ベッドへと導いた。
菜緒ちゃんの服を脱がし全裸にして正常位で挿入する。
今日は朝から何度挿入しただろう。
数えてはいないが5回は挿入している。だから膣は開いておりすぐに挿入出来た。
しばらく腰を振って、菜緒ちゃんに「気持ちいい、気持ちいい」と言わせる。
一番の気付け薬だ。
中学の教師は菜緒ちゃんの膣に挿入はしなかった。
指は二回ほど入れたが、そのたびに菜緒ちゃんが痛がるので、それ以上はしなかったそうだ。
その代わりに口で奉仕させた。
毎回3時間くらいさせたそうだ。道理でフェラが上手いはずだ。
菜緒ちゃんに気持ちの良い本当のセックスを教え込むべく、ひたすらに腰を振る。
奥が当たると気持ち良いようなので、開発は時間の問題だろう。
「まだ二人しか経験無いですが、△さんとは本当に相性が良いと思います」とも言ってくれる。
そして射精。
今日菜緒ちゃんに二回目だ。
菜緒ちゃん「ありがとうございます。何だか私、トラウマを克服できるような気がしてきました」
マックさん「それは良かった。ていうか、回復してくれなければ、僕の方が困る。頑張ってね。ところで、さっき浴室で涙ぐんでいたけど、あの涙はどんな気持ちの現われなのかな?その教師に好意を抱いていたとか、あるいは懐かしいって感じが少しはあるの?」
菜緒ちゃん「いえ、それは無いです」
きっぱりと断言する。
マックさん「じゃあ、悔しいって感じ?」
菜緒ちゃん「悔しさとはちょっと違います」
マックさん「じゃあ、子供が悲しい時に泣くような、とても原始的で単純な涙なのかな?」
菜緒ちゃん「・・判らないです」
マックさん「じゃあさ、その頃の自分に向かって『声掛け』が出来るとしたら、何と言ってあげたい?」
菜緒ちゃん「『早く気付け』って言いたいです」
マックさん「うーん、『大事にして貰えなかった悲しみ』なのかな?」
菜緒ちゃん「あ、それ一番近いかもしれません」
振り返って考えると、中学教師との関係性において、菜緒ちゃんには得られるものが全く無かった。
Give and takeのTakeが無い。菜緒ちゃんの側からの持ち出しばかり。
だから「性的搾取」されたと感じるのだろう。
その点、私との関係性は、与えられるものが多い。
多すぎるくらいだと嬉しい悲鳴をあげてくれる。
もちろんお手当もそうなのだが、菜緒ちゃんの「再演」に正しく向き合ってくれるところが良いらしい。
元々中学教師となぜそういう関係になったかというと、菜緒ちゃんが母親からの虐待のことを打ち明けたとき、それを解決してくれそうな素振りをしたのだそうだ。
菜緒ちゃんはそこにすがった。
しかし教師は結局何もしなかった。
助けを求めたのに何も与えられず、ただただ搾取されただけ。
その関係が19才まで続いた。
そのあとネットで知り合った既婚男性とは、いろんな雑談が出来て友達のようで楽しかった。
それで記憶の上書きのための「再演」に協力してもらおうと、菜緒ちゃんから色仕掛けしたのだが、雑談は楽しくても「再演」に協力するといった深い話には理解も関心も示さなかったようだ。
マックさん「その既婚男性じゃなくて、僕で処女卒業しておいて良かったね」
菜緒ちゃん「今となっては本当にそう思います」
マックさん「前から言ってるように、僕は処女厨じゃないから必ずしもこだわらない。だけど、その既婚男性とするくらいなら、僕が引き受けてしまおうと、直観でそう思ったんだ。やっぱり間違ってなかったなあ。」
それにしても「トラウマの再演」ってこんな風に人間を引っ張って動かすものなのか。
まるで強力な磁石に吸い寄せられていくようだ。
ー凄まじい葛藤とともに再演は生じる。「なぜそんなところに」「なぜそんな人を」と問われても、本人ですら説明しようが無い。無意識の力でどうしようもなく危険な場面に吸い寄せられてしまうー
文章として書かれたものを読んで私なりに理解したつもりでいたが、目の当たりにするとやはり迫力が違う。
これは理性では太刀打ち出来ないわ。
何に似ているか考えてみたのだが、薬物やアルコール依存の患者がつい手を出してしまう衝動に似ていると思う。
決して依存ではないのだが、俗に言う「セックス依存症」と誤解されてしまうのが解る気がした。(続く)