恋愛ワクチン 第二十三話 ハプニングバーとカップル喫茶

「さきほど電話で予約した湯葉です。指示された〇〇交差点に着きました。」

 ○○交差点は繁華街からは少し外れている。昭和の頃にはこのあたりまでネオン街が続いていたのだが、バブル後は空き店舗が目立つ。

立ち並ぶマンションもおそらく空室が多いだろう。 

電話の向こうから、予約の時と同じ男性の声で返答があった。

「南東角にある□マンションの△号室に来てください。」

 今日の湯葉は女の子を連れてカップル喫茶初体験だ。

ハプニングバーには何回か行って遊び方も慣れた。

ただし一軒のお店だけなので、別のお店にも行ってみようと思い立ち、ネットで調べて、カップル喫茶の存在を知った。

しかしHPに書かれたシステムの案内を読んでも、口コミ掲示板の類を見ても、どうも両者の違いがよく判らない。

それで、実際に行ってみようと考えたのだった。 

 部屋の前に着いた。看板も表札も無い。

そもそもホームページにも電話番号のみが記されていて、「初めての方は予約の上○○交差点に着いたら電話してください」とあるだけだ。

とても怪しい。
 

もっともこれはハプニングバーも同じで、後述するような理由があってのことである。 

ドアホンを鳴らすと、四十才くらいの男性が現れた。マスターだろう。

「身分証ありますか?」


「僕は運転免許証、この子は運転免許持ってないんで保険証で」

男性は受け取ってその場でコピーをとった。このシステムもハプニングバーと同じである。 

なぜこうなっているかというと、公然わいせつ罪で検挙されないための用心だ。

公然わいせつ罪とは、「不特定多数の人の目に触れるような場所で公然とわいせつな行為をする罪」である。

看板を掲げてバーや喫茶店として届けて営業すれば、不特定多数の人が自由に出入りできるとみなされてしまう。

また、身分証で本人であることを確認すれば「不特定」とは言えなくなる。

商売ではなく同じ趣味の人たちのサークルだと言い逃れが出来る。 

以前、交際クラブが管理売春を疑われないための対策についてまとめた。

「売春」の法的定義もまた、「売春とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう」である。

したがってユニバース倶楽部のように男女両会員と面接し身分証の確認もしておけば、「不特定」で無くなるので、そもそも管理売春は成立しない。

その理屈と似ている。 

部屋は、単独男性の部屋と、単独女性およびカップル専用の部屋と、プレイルーム、この三つが独立している。 

マスターが説明を始めた。

「カップルさんはこちらの部屋でお待ちいただきます。今、単独男性さん3人いらっしゃいますが、あと2人来る予定です。揃ったら僕が案内しますので、今日の相手を決めてください。一人でも複数でも結構です。」 

湯葉が口を挟む。

「電話でお伝えしましたが、今回は、男性たちにはソフトタッチしてもらうだけで、挿入などはNGですが、大丈夫でしょうか?」 

「もちろんです。その意向をはっきり伝えていただければ、彼らは決してそれ以上のことはしません。もし変な奴がいたら言ってください。僕が追い出します。」 

告白するが、湯葉はハプニングバー初体験の時に恥をかいた。

友人たちを交えての複数プレイのときには、全然大丈夫だったので、自分を過信したのだろう。

ハプニングバーのソファで、自分が連れてきた女性とセックスしようとしたのだが、カウンター席に座ってこちらを見ている十人くらいの男性たちの視線が気になって、どうしても射精に至らなかった。

日を改めて満を持して臨んで、なんとか成功したので、トラウマになることはだけは免れたが、それ以来、ハプニングバーでの遊びは前戯と割り切ることにした。

慎重になった。 

ラブホテルに行く前の前戯と考えれば、ハプニングバーという空間は色々使える。

湯葉は自身のプレイを演出することが好きだ。

あまり露骨に書くと、性的描写がきつくなって編集部からクレームが来るので、さらっと書き流すが、玄関で女性を全裸にして首輪と手枷をつけた状態で入室させ、ソファで開脚具を付けたあと居合わせた男性たち全員に撫でまわしてもらうとか

中古のウェディングドレスを買って持ち込み、まずは女性に着せて皆で綺麗だと讃えたあと、プレイルームでドレスを着せたまま、やはり拘束具をつけて弄ぶとか、まあそういった類である。 

女性たちの了解はもちろん得ている。

嫌がる子にお金を積んで付き合わせるなんて野暮で卑怯なことは、湯葉の趣味に合わない。

初耳の人には信じ難いかもしれないが、若い娘たちの中にはこういう刺激的なシチュエーションを喜ぶ子が結構いる。

知っている人は解る解ると頷いてくれると思う。 

しかし、今回のお話の主題はそういった具体的なプレイ内容ではない。

また、湯葉が連れている女の子(美香としよう)は、近々ユニバースの面接を受ける予定の21才OLである。

良い魚を釣ろうと思ったら、川のなるべく上流に移動したほうが良い。

アプリでパパを探し始めてまだ一週間の美香を湯葉の親友が釣り上げて、湯葉に好みだろうと回してくれた。

湯葉は美香をなじみのスカウトに紹介して、そのスカウトがユニバに上げた。 

湯葉はスカウトからバックマージンなど貰わない。

それよりも、スカウトに紹介しておくことで、次に良い子が見つかったときにスカウトからいち早く連絡が来る。

そういった見返りのほうが美味しい。

ユニバのシークレットブラックになった子を、ユニバに上げる前に頂いたこともある。

美人でかつ、ブラックの男性会員たちによってスポイルされる前なので謙虚だ。


初々しさ=鮮度である。 


ユニバースの男性会員たちの中には、湯葉同様、中小企業のオーナー社長も多いのではないだろうか。

きっと一度は考えたことがあるに違いない。

交際クラブの「商品」である女性の流通はどうなっているのだろうかと。

仕入れを制する者は商売を制する。

産地直送がいちばん新鮮だ。

湯葉が女性たちにインタビューして調べた流通の話をもっと細かく記したいが、やはり今回の話の主題ではないので割愛する。

そうしなければどんどん話がそれる。 

今回の話の要は、カップル(および単独女性)部屋に先にいた、一人の女性である。 

丸顔でスタイルの良いその女性は、年齢は二十代半ばだろうか。

普通にユニバースのアルバムに載ってそうな顔形だ。

ゴールド、あるいは愛想が良くて面接の印象が良ければプラチナでもおかしくはない。 

湯葉と目が合った。軽く会釈してから湯葉は声をかけた。

「こんにちは、僕たちここは初めてなんですが、あなたはよくいらっしゃるんですか?」 

「3回目です」

「そうですか。僕は○○っていうハプニングバーに3回ほど行ったことがあります。○○ご存知ですか?」 

「ええ、ネットで名前だけは知ってます。」

「このカップル喫茶は何で知ったんですか?お友達に聞いたとか?」

「いえ、ネットで調べてです。女性を大切にしてくれそうなお店だと感じたので、少し怖かったけど思い切って一人で来てみました。」 

「勇気ありますね。怖くなかったですか?」

「怖かったですよ。表札も何もないじゃないですか。ここに来ることは誰にも言ってなかったし、このまま拉致されて行方不明になるんじゃないかと不安でした。でもマスターが良い人そうなのですぐに安心しました」 

「中に入ってみると、ハプニングバーもそうだけど、意外とアットホームなんですよね」 

「そうそう、2回目来たときは、友達と近くで遊んでたんだけど、その友達に急用が出来て一人残されちゃったんです。このお店の近くだってことを思い出して、お店に電話して、すぐに男の人たち集めてもらいました」 

カップル喫茶に単独女性やカップルの予約が入ると、マスターがその旨ネットの掲示板に書き込む。するとそれを見た暇な単独男性たちが集まってくる、そういうシステムのようだ。 

「なるほど、単独女性は無料でしたっけ。そういうときの暇つぶしにはいいですね」 

「そうなんですよ。勇気を出して飛び込んでみて、本当に良かったなあって思ってます。」 

無料だから確かに得した気にもなるかもしれない。

しかし、名前も知らない単独女性さん、あなたはユニバのような交際クラブでデートすれば、お金も貰えるんだよ。

男性も手間と時間はかかるけれどもオファーされた中からは選べるし。

まあ、若い男性に会える確率はほとんど無いから仕方ないか。 

マスターが入ってきて声をかけた。

「男性揃いました。今日は5人です。」

「美香ちゃん、じゃあ、全裸で行って。男の人たち喜ばせてあげてね」

「えーっ、いいですけど、お姉さんも一緒に服脱ぎましょうよー」

「私はガウンを着たままでいいわ。美香ちゃんっていうの?いいわ、私が連れて行ってあげる。一緒に行きましょう。」 

私を含め3人は待機部屋に入る前に服を脱いでいるので下着の上はガウン1枚だ。

2人で美香を全裸に剥いて、彼女が男部屋に連れて行ってくれた。 

男部屋に2人が入った途端、「おーっ」という歓声が上がった。

美香は恥ずかしがって頬を赤らめていることだろう。

湯葉流の「前戯」の始まりだ。 

その後、プレイルームに移動して、美香を拘束具で開脚して目隠しし、男性たちを順に呼んで使い捨ての手袋を渡して、

「一人3分です。キスは駄目だけど手袋して指は入れていいですよ」

と、美香の女体を振る舞った。

一人ずつ男性が現れる。

全員20才台だろうか、若い。 

凄いイケメンという訳でもないが、キモいという感じは全くない。

普通に彼女がいそうな若者たちだ。 

ハプニングバーは、どちらかというと男性も女性も40才台以降が中心で、誰でもそれなりに楽しめる緩い雰囲気の世界だが、カップル喫茶では、男性は女性に選ばれる必要がある、自ずから男性は淘汰される。

なるほど、そういう違いがあるわけだ。 

そういえば、単独女性のお姉さんはどうしたのだろうと部屋を見渡すと、好みの男性を指名したようで、部屋の反対側で二人ですでに横になってまぐわっている。 

ここからが、今回の記事の要である。

よく読んで欲しい。

その相手の男性、坊主頭だが、やんちゃではなく、薄くなった髪をカモフラージュするためと湯葉は見た。

たぶん年齢は50才くらいだろう。 

単独女性さんはどう見ても20才台半ばで、30才を超えているとは思えない。

湯葉は女性相手の商売をしているので、年齢当てにはそれなりの自信がある。

顔もスタイルも良い。

繰り返すがユニバでいうとゴールドまたはプラチナだろう。

スタンダードでは絶対にありえない。 

何も、50才位のおじさんと、こんなところでタダでやらなくてもいいのではないか? 

ユニバース行けよ、お金貰えるよ。

セックスしたいなら、あとの4人の同世代の若者はどうなのよ?

彼ら草食では無い、ヤリたくてウズウズして来てるんだぞ。 

そして、坊主頭のおじさん、あんた偉いよ。

何が凄いってメンタルの強さが半端ない。

20才代の若者たちに混ざって男部屋で待機して、選ばれるチャンスそう多くは無いでしょうに。

時には俺ゴミみたいに見られてるって感じて嫌になっちゃわないですか? 

それでも毎回単独男性の参加費何千円か払って、選ばれるという男の勲章を狙ってるわけだ。

性処理だけならその金で風俗行行ったほうがいい。 

男だねえ。

お姉さん、50才位の彼を選んでくれてありがとう。

彼が選ばれなかったら、湯葉は

「ああやっぱり若い男には勝てない。それにしてもこんなおっさんが、万が一にも選ばれるなんて思ってるんだろうか?」

と、鏡に映った年取った自分を見せられるような、同族嫌悪に陥るところでした。 

だけど、お姉さん。

おじさん好きなら、やっぱり交際クラブのほうが良いと思うよ。

知らないんだろうなあ、もっと美味しい果実がなっている畑がその先にあるってことを。

カップル喫茶のルールで互いの連絡先交換は厳禁。

しかしユニバ下請けのスカウトさんのラインID教えたくて仕方がなかった湯葉さんでした。

おしまい。 

(補足)湯葉愛用の拘束具はアマゾンで3千円ほどで買えます。
↑注)開くとき場所に注意。こちらクリックでご覧いただけます。
 

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