昨夏の旅から 前篇
【突然のLINEは迷惑です。多分】
静江は「突然の愛は迷惑でしょうか?」と歌う。もちろん静江なら迷惑じゃない。しかしながら、ムシレルだけムシッタ後で突然音信不通になっておいてイケシャーイケシャーとこれまた突然LINEをよこす一部の宇宙倶楽部女子は言うまでもなく迷惑だ。文面は例えばこんなふうだろうと思われる。
・久しぶりです。お元気ですか?、
・相談したいことがあるので一度会っていただけませんか?
・とにかく助けて!
文面ははもっとパターンがあるだろうが、基本諭吉のムシンである。as soon as possible 削除(或いはブロック)の一手である。が、しかし、not only but also ,仲睦まじかった頃を思い出して(これ又幻想なのだけれど)股間を熱くしてしまうオトウサマもいらっしゃるだろう。ジョーも又その1人だ。そして葛藤の末股間の迸りが勝ってしまうと「うむ⁈どうした?相談に乗ろうか?」などという地獄の扉を開くパスワードを自ら送信してしまうのである。こうなったらIt is no use crying over spilt milkだ(使い方合ってる?)。
【抗えない突然LINEもあるさ】
京都は、盆地だから夏は暑いとよく言われるし、実際暑い。気温の高さもあるけれど湿度の高さが何より辛い。去年は京都に暮らし始めて最初の夏でその蒸し暑さに我慢の限界に達しつつあった。そんな時、運悪く?お姫様から突然のLINEである。恐る恐る開いてみるとそこには「ジョーちゃん!ニセコに行くけど遊びに来ない?」とある。ジョーは骨の髄まで調教されているのでお姫様の誘いを断ることは不可能である。と同時に京都の蒸し暑さにやられていたから「お姫様の誘いで行くのではなく、これは避暑なのだ」という言い訳も立った。ジョーは学生時代の4年間を北海道、より正確に言えば札幌で過した。学生時代は友達も少なく良い思い出があまりけれど唯一の親友?が函館にいる。まずは函館へ。そして札幌に移動してからは辛うじて付き合いのある同級生に会おう。大きな声では言えないけど札幌のメインはオッパイカイデー宇宙倶楽部女子(以下カイデー女子)とのクンズホツレツだ。誘うと二つ返事で承諾。最後に姫とニセコへ。我ながら完璧な計画だ(苦笑)。
【まずはマンボウ発令中の函館から】
ケンちゃんは大学時代唯一、友達といえる存在だった。進学した大学は道内出身者が半分を占め、本来それほど社交的とは言えないジョーはなかなか土地にも大学にも馴染めずにいた。そんな中で、函館出身のケンちゃんだけが声をかけてくれ、卒業後も数年に一度互いの場所を行き来している。ケンちゃんによればコロナ以降、函館没落の加速度が一気に進んだという。ジョーが最後にこの地へやって来たのは5年前だけれど、その時に比べても街が寂れているのが分かった。ケンちゃんはロシアへの留学経験がある。何せ中学の入学祝いとして両親に「ロシア語の家庭教師」をリクエストしたくらいだ。奥さんは留学時代に知り合ったロシア人だ。昔に比べ少しフクヨカになられたけど相変わらずの美人。GOOD COOKER でもあり和露取り混ぜた料理で歓待される。もちろん楽しい夜だった。その夜はケンちゃんの家に泊まり早朝勝手に?家を出て函館朝イチへ。こういうわがままが出来るのはケンちゃんだからこそ。
【そして同級生たちと札幌でランチ】
ジョーは元鉄ちゃんだから函館から4時間近くかけての札幌列車移動は全く苦にならない。昼前に札幌着。マンボウ発令中で昼の方が集まりやすいとのことで日曜日の昼に同窓会。ジョーを含め7名参加。在学中は仲が良かったとは言い難いけれど30年の時が関係性を変えることもある。大学時代の思い出を中心に話に花が咲き、昼間だけどサッポロクラッシックのジョッキを重ねた。それぞれ個性的な生き方をしていて、ジョーも大いに刺激を受けていい気分で解散し、次の会場?へ急いだ。
【札幌の夜は宇宙倶楽部女子と】
夕方過ぎ、今宵のホテルロビーでカイデー女子と待ち合わせ。カイデー女子は初北海道で興奮気味。ジョーと1泊した後は他のオトウサマと2泊するらしい。お忙しいおすな。チェックインを済ませた後、円山公園近くの寿司屋にタクシーで移動。マンボウ発令中で営業は8時まで。座席はわずか6席だからいつもは2回転するが1回転のみ。「経営的には厳しいです」と30代の大将はこぼしていた。しかし内容はいつも以上の充実ぶり。ウニ、帆立、イカが特に良かった。寿司にはうるさいカイデー女子も大絶賛。「ウニに関しては生涯ベストワンかも」のお言葉を頂きなぜかジョーも鼻高々。満足度が高いのは味だけでなくお支払いもだ。この内容でそして日本酒もまぁまぁ頂き、2人で33,000円也。大将は「北海道じゃあこれ以上は頂けません」という。すすきの辺りにはもっと醜い鮨屋があるけどなぁ、と思いつ既にカイデー女子とのクンズホツレツで頭の中は一杯だ。マンボウなので連れて行きたいバーも閉まってるからホテルへ直行。部屋に入るや否やカイデーなパイオツにいろんなところを埋める。これまでカイデー女子とのセックスの相性はそれほど良くないと思っていたが、初北海道で美味しい鮨の効果もあって今日のカイデーは超積極的。まずは全力のキスから始まり「そんなところ舐めちゃぁダメだろうよ」というところまで舐め上げられ、絶叫と共にお互い(ウソ、多分ジョーだけ)果てるのだった。宇宙倶楽部での活動の場合旅が関係を終わらせることも少なくないがその逆も又あると知った札幌の夜だった。
【大倉山ジャンプ競技場からのニセコを目指す】
翌朝は早起きして大倉山ジャンプ競技場へ。札幌のベタな観光地は他のオトウサマにお任せするとして、ちょっと行きにくい?こちらへカイデー女子を案内すべくタクシーを飛ばす。会場と共にリフトに乗り、展望台へ。90m級のジャンプ台が体感できる。高所平気症のカイデー女子は声を上げながらスマホのシャッターを切っている。ジョーは次の予定があるのでこの展望台で解散(苦笑)。ハグをしてリフトで降り、タクシーに乗ってホテルへ。荷物をピックアップし、入り口の駐車スペースへ向かうと室蘭ナンバー白のポルシェで姫が待機している。社外に出てジョーに向かって大きく手を振っている。ああ、相変わらず綺麗だな。後部座席に荷物を置いて、助手席に乗り込む。「久しぶり!」と声をかけた後は、オプションを入れれば1,800万近いと思われる室蘭ナンバーの最新型911について、尋ねるべきだが、姫からの解答にシアワセはすこしも含まれていないので黙っていた。柄にもなく緊張していている。最新型の911はスイッチ盛りだくさんで運転するというよりさせられている感が強い。シートは20数段階に調整でき、ドアサイドにはそのためのスイッチ類がドイツ車らしく機能的に配置されているけれど見た目はごちゃごちゃしていて美しくない。ところが一旦車が走り出すとその印象は一変する。空冷時代のいわゆるポルシェサウンドは望むべくもないけれど、助手席に座っていても分かる官能的なサウンドだ。姫によれば運転フィーリングは「まるでNAのようにナチュラル」だそうだ。世間でよう言われるように「最新の911が、最高の911」ということなのだろう。
【ニセコでラフティング】
荒いというわけではないけれど、姫の運転は法定遵守には程遠いので(苦笑)1時間ちょっとでニセコ入り。姫が何度か行ったことがあるというバイキングの店でランチを済ませた後、ラフティング体験をすべく店に向かう。そこで車を置きウエットスーツにヘルメット、ライフジャケットに着替え、店の車に乗り換える。明日登山予定の羊蹄山を眺めながらの移動だ。とにかく暑い日だった。ニセコの夏の平均気温は20度台前半でニセコの一般住宅にはエアコンのないところが多いという。それが今年は(つまり去年は)連日の30度越え、雨も少なく、畑も日上がっていると店主は話す。20分程でラフティングスタート場所である尻別川上流に到着。姫とジョー、そしてドイツ人家族4人の合計6名でボートに乗り込んだ。今は日本在住だがフランスとの国境沿い出身のフランス系ドイツ人で、姫とはフランス語で話している。何を言っているのかさっぱりなのでちょっと淋しい(苦笑)。店主と助手から簡単なレクチャーを受け、スタート。前半は急流が続き、ボートが上下左右に大きく揺れることもあるが転覆するほどではなく、刺激の少ないジェットコースターのようでジョーも楽しめた。水深の深いところでは丘に上がり小高い岩山から川に飛び込む。日差しは強いけれど水温は冷たく冷水を浴びているようで気持ちがいい。中学生と小学生だというドイツ人の子供が歓声を上げながら何度も川に飛び込んでいた。後半は一転して川幅が広くなり、静流となる。舟も姫と2人乗りのカヌーに乗り換える。日差しの強さは相変わらずだけれど、冷たい川の水を感じながらのんびり漕いでいくのも悪くない。何せ前で漕いでいるのはあの姫なのだ。急流7㎞、静流10㎞の舟旅?はあっという間に終わった。
【今夜のお泊まりはミリオンの貸別荘さ】
ラフティングの後はスーパーに行き買い物。今夜の宿泊先である姫が予約した?○ミリオンで売り出されているという貸別荘へ。3ベットルームにそれぞれシャワールームがあり30平米近いリビングとテラスそしてジャクジー。2人で泊まるには広すぎる。お腹がぺこぺこだったので姫の案内で近所のジンギスカンの店に行った。今回ニセコ旅行は全て姫の仕切りで楽チンだけどその代わりジョーに拒否権はない。本音を言うと学生時代一生分のジンギスカンを食べたのでできればジンギスカンは避けたいところだ。姫の案内だからまずい店ではなかったけれど、いい意味ではなくセンチメンタルな味がした。
【そして夜は深けていく】
実を言うと(実を言わなくても)昨日からと言うよりニセコへの旅が決まった時から、ずっと考えていたことがある。姫とのセックスだ。つまりTo be or not to be that’s question なのである。これはお手当の問題も絡む。一応お手当の関係ではないことになっている。しかしお手当を払わずに姫とセックスするのはとても怖い。そういう話はしなければならないとは思うけれど、気が重い。どうしてだろう?と理由を考える。すると姫はジョーの迷いを察するように「明日は早いし、猛暑の中羊蹄山に登るから体力温存のため別々の部屋で早く寝ましょ」と不敵に笑う。問題先送りだけど正直ホッとした。お風呂も別々に入り、明日の登山に備えてベットに入った。明日は5時前に起床だ。