ストレスの少ない性感染症対策(梅毒情報編)

性感染症が増えています。前回は、日本全体の性器クラミジア感染報告数が減少傾向なのに、中高年男性だけが増加していることを示しました。今回は、梅毒が若い女性だけでなく中高年男性でも増えていることを数字で示します。

《梅毒がいちばん多いのは実は中高年男性》

性感染症予防の啓蒙活動は、厚労省のキャンペーンポスターにあったとおり、対象が若い女性に偏りがちです。しかし実際は、前編で示した性器クラミジア感染のように、真に注意しなければならないのは中高年男性だったりします。クラミジアが例外でないことを示すため、ここでは梅毒の数字も紹介します。


性別 期間 年齢別の梅毒報告数および増減
24歳以下 25~39歳 40歳以上

男性

1999-2003年 244 736 1,197
2016-2020年 2,323 7,775 9,901
上記期間の増減 9.5 11 8.3
 

女性

1999-2003年 170 318 514
2016-2020年 3,928 3,898 2,091
上記期間の増減 23 12 4.1

20年間というタイムスケールで見ると、増加率は確かに若い女性がいちばん高くなっています。しかしこれは、若い女性の梅毒感染率が20年前は顕著に低く、そのため増加率が高くなっただけです。直近5年間で報告された梅毒の絶対数を見ると、24歳以下の女性が3,928人であったのに対し、40歳以上の男性は9,901と2倍以上であり、近年においても中高年男性がいちばん多いのです。

健全なパパ活において性病防止は大切ですから、梅毒の実感染者数でもっとも多いのは中高年男性であることは、パパ活に関係する皆さんは意識された方が良さそうです。

“40歳以上は年齢範囲が広いから数も多いのでは?”と考えられる人もいるかと思いますが、年齢別でも、20代女性と40代男性はほぼ同じ感染者数でした。


〇 40~44歳男性の梅毒感染報告数(2016-2020) 2,768人

〇 45~49歳男性の梅毒感染報告数(2016-2020) 2,419人

〇 20~24歳女性の梅毒感染報告数(2016-2020) 3,093人

〇 25~29歳女性の梅毒感染報告数(2016-2020) 2,067人


《中高年は性器ヘルペスにも要注意》

次は性器ヘルペス、この20年間で若い世代の報告数が目に見える形で減少した一方、中高年世代で増加傾向にあり、これも要注意の性感染症となっています。


性別 期間 年齢別の性器ヘルペス報告数および増減
24歳以下 25~39歳 40歳以上

男性

1999-2003年 2,715 8,320 7,953
2016-2020年 1,964 6,964 8,815
上記期間の増減 0.72 0.84 1.11
 

女性

1999-2003年 7,176 10,900 7,260
2016-2020年 5,245 11,485 11,552
上記期間の増減 0.73 1.05 1.59

《淋病は落ち着いている》

20年前は主流だった淋病は、最近は落ち着いています。中高年女性が増加したのは、元の数字が低いからそう見えるだけで、絶対数が小さいからレベル的には問題になりません。数だけ見ると性感染症関連で唯一の良い情報ですけど、抗生物質が効かないものが静かに広がっているので油断は禁物です。


性別 期間 年齢別の淋菌感染報告数および増減
24歳以下 25~39歳 40歳以上

男性

1999-2003年 23,238 39,969 12,070
2016-2020年 8,316 15,516 8,844
上記期間の増減 0.36 0.39 0.73
 

女性

1999-2003年 9,152 6,519 1,105
2016-2020年 4,175 3,134 1,224
上記期間の増減 0.46 0.48 1.11

《中高年男性はコンジローマも要警戒》

尖圭コンジローマは性器ヘルペスと同じ傾向で、この20年間で若い世代の報告数が目に見える形で減少した一方、中高年世代で増加傾向にあります。特に中高年男性は、ここ20年間の増加率および近年における報告数のいずれも他の世代と比較してはっきりと高くなっていることから、警戒が必要です。


性別 期間 年齢別の尖圭コンジローマ報告数および増減
24歳以下 25~39歳 40歳以上

男性

1999-2003年 3,858 6,705 2,925
2016-2020年 2,304 8,540 7,488
上記期間の増減 0.60 1.27 2.56
 

女性

1999-2003年 6,399 4,188 800
2016-2020年 3,504 4,991 1,901
上記期間の増減 0.55 1.19 2,38

《現場の予言が的中》

数字ばかり多くなってしまい申し訳ありません。読み解くポイントは、増減率と絶対数です。中高年女性の淋病のように、増減率だけ見ると増えていても、20年間を通した絶対数が他の世代と比較して明らかに低ければ問題になりません。逆に、中高年男性の梅毒のように、20年間を通した絶対数が突出して多ければ、増減率が小さくても悪い影響が大きくなります。

クラミジア、梅毒、性器ヘルペス、淋菌、尖圭コンジローマについて、男女/世代別の感染者を、20年間の増減率および報告数で比較すると、パパ活においては中高年男性の性感染症対策がとても大切であると分かります。

クラミジアと梅毒は大手メディアにもたびたび取り上げられますが、性器ヘルペスとコンジローマの感染状況に触れられることが少ない中、中高年における感染拡大を予測するような投稿を見つけました。新宿さくらクリニックのDr. Sawamura’s 性病事典で、2010年に「著者が今注目してているのは尖圭コンジローマと性器ヘルペスです」と書かれています。現場で活躍するお医者さんの観察眼は鋭いですね、10年経って見事に予言が的中しました。

 

健全なパパ活の成立には性感染症の防止が欠かせず、でもマスコミは若い女性ばかり取り上げるので、今回は中高年男性の現状を数字で紹介しました。次回は、パパ活で陥りやすい「自分だけは大丈夫」という正常性バイアスについて考察し、ストレスの少ない性感染症対策を探っていきます。

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