恋愛ワクチン 第二十二話 ただより高いものはない?

現役男性会員のコラムライターさんが増えて活況を呈してきました。

皆さん、分野は違っても、ひとかどの方たちばかりですから、遊び方考え方、どの記事をとっても勉強になります。

ライオンはウサギを捕えるにも全力を尽くすと言いますが、パパ活への取り組み方一つにもそれぞれのビジネスの視点が反映されているような気がして興味深いです。

コラムの方針として、過度に性的な描写がきつすぎるものは控えて欲しいとのことで、第二十話は取り下げとなりました。

ですので、そのあたりに配慮しつつ第二十二話書いてみたいと思います。

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湯葉は亜美との行為を終えて、ベッドで並んで横になっている。湯葉にとっては至福のときだ。亜美をいとおしそうに引き寄せる。

亜美は素直に従って湯葉の腕に抱かれる。

この小柄で細身の娘とはもう十回以上会っているが、湯葉の言うことを何一つ拒んだことが無い。

いつも小さな声で「はい」と言って従うし、次からは空気を読んで率先して奉仕する。

そんな亜美が、ふと、肩を震わせて泣き始めた。

「どうしたの?」

「いえ、何でもないんです。ごめんなさい」

ラブホテルの暗い照明の中、亜美の涙が作り笑顔の頬をつたって流れる。

「どうしたの?何でも言ってごらん」

「・・私、せめてセックスくらい気持ちよくてもいいのに、と思ったら急に悲しくなってきてしまって」

「気持ち良さそうな様子だし、声も出てるじゃない。あれは演技?」

亜美は何も答えない。

しばらくすると、亜美も落ち着き、湯葉もそれ以上は詮索せずに、笑っていつものように別れた。

数日後、ラインが来た。

打ち明け話だった。本当はセックスは嫌い。

男の人も大嫌い。

レズビアンという訳ではない。

湯葉のことは好きだし、一緒にいて心を許せて安心できる今のところたった一人だけの人である。

だから、湯葉の行為に反応することが出来ない自分が悲しい。

彼女が男嫌いというのは理解できる。

ちょっと書くのが憚られるレベルなのであえて省略するが、会って五回目か六回目だっただろうか、亜美は少しずつ語り始めた。

湯葉は女の子の心を掘るのが好きだが、こんな鉱脈は見たことがない。

それまで会った女性たち全てがかすんでしまう。

亜美がこの年まで自殺せずに生きてきたことが湯葉には奇跡に思えた。

それでいて外見はどちらかというと清楚な女子大生なのだ。このギャップがたまらない。

亜美としては、自身のこんな履歴は、男性にとって汚らわしく忌まわしいものでこそあれ、湯葉のように身を乗り出して聞いてくれる人間がいるとは思わなかったようだ。

おそるおそる、嫌われて会ってもらえなくなるのではないかという不安な表情を浮かべながら、少しずつ湯葉の問いに答えた。

そして、心を許したのだろう、初めてセックスが嫌いという本音を湯葉に伝えたのだった。

しかし、湯葉はセラピストではない。ただのパパ活おじさんだ。

女の子の履歴を掘るのは、実のところ、ただの好奇心からでしかない。

「セックスは嫌いですけど、湯葉さんのことは本当に好きです。だから、どうか気になさらずに、私のことを性奴隷でも何でも、なんならただの穴でいいですから、これからも自由に好きなように使ってください。お願いします」



湯葉は困った。



亜美を抱くときの独特な感覚がなぜなのかも理解した。

彼女とのセックスは、ちょうど東南アジアの人身売買で監禁された少女となら、きっとこんな感じなのだろうといったものなのだ。

こちらが要求するすべてを受け入れる。

しかし、湯葉の趣味ではない。セックスはお互い楽しむためのものだ。

性奴隷ごっこのプレイならともかく、リアルでは出来ない。

悩んだ挙句、湯葉は返信した。

「亜美ちゃん、ごめん。さすがにその本音知ったら、僕にはもうセックス出来ないよ」

後味の悪い別れ方だし、他にまったく心を許せる相手のいない20才そこそこの娘が、自分にだけ心を開いてくれたという重要さは解る。

ここで自分が彼女を切ってしまったら、彼女は奈落に突き落とされることだろう。

それから何通もラインが来た。

ネガティブなことを書いてしまって御免なさい。

湯葉さんに本音を伝えたことで、自分は生まれ変わったような気がします。

明るく楽しい女の子になったので、絶対に喜んでもらえる自信があります。

どうかもう一度会ってください。


湯葉は無視し続けた。

普通の別れとは異なり、本当に後ろ髪引かれる思いだ。

なんでこんな思いしなくちゃならないんだろう。

優しさが湯葉の弱点でもあることは自覚がある。

そこを亜美が見抜いてすがっているのかもしれない。

「お金が問題なら、お金要りません」

そこまで亜美はラインで書いて寄こした。

亜美からのラインが途絶えて一週間ほどたった。

湯葉はやっぱり気になってしょうがない。

絶望して自殺でもしていないだろうか?

思いあぐねて、湯葉は亜美の抱える問題の解決につながる妙手を思いついた。そして関係者に会って話を取りまとめると、その場で亜美に電話した。ラインではもどかしい。

久しぶりに聞く亜美の声だ。

生きていてくれて良かった、大げさではなく本当にそう思った。

しばらくして、亜美からお礼のラインが届いた。

「ありがとうございます。嬉しいです。だけど、やっぱり湯葉さんに会いたいです。会ってお礼を言いたいです」

湯葉は根負けした。

「わかったよ。じゃあ、また前のようにホテルに行って、だけどお金は無しで、フェラもセックスも無し。そのかわり、ずっと頭撫でていてあげる。それでいい?」

「はい、嬉しいです」

亜美に、フェラもセックスもしなくても、可愛がってくれる人はいるんだってことを教えてやろう。


たまにはこんな善行を施すのも良い。天国に行けるかもしれない。


クリスマスが近い。亜美の誕生月でもある。物心ついてから、誕生日もクリスマスも一緒に祝ってくれた人は亜美にはいない。

ちょっとしたお菓子を買って、部屋で一緒に食べた。

湯葉はソファで亜美を抱き寄せて、頭を撫で続けた。亜美はぴったりと寄り添って離れない。

そのうちに亜美は湯葉の股間をまさぐり始めた。そうすることでしか自分の価値を認めてもらえなかった女性の悲しい習性なのだろう。

触るくらいは良いだろう、湯葉も背中越しに見える腰からお尻にかけての美しい曲線を撫でた。

そのうちに亜美は湯葉のズボンのシッパーを降ろして、以前と同じようにフェラを始めた。

湯葉も気持ちよいし、何よりも、「それはだめ」と言うことが、亜美を拒絶して悲しませてしまうような気がして断り切れない。

「挿入さえしなければ良いだろう」、その時はそう考えた。

亜美のフェラは終わらない。一時間以上も続いただろうか。引き離して口づけして抱き締めるのだが、しばらくするとまた股間に顔を戻す。

「湯葉さん、好きです、大好き」

顔を股間から引き離すたびに何度もそう言われて、さすがに堪らず、

「ごめん、やっぱり挿れたくなっちゃった。いい?」

亜美は頷く。

湯葉はベッドに移動し、亜美を気遣って、極力早く射精して終わらせようと気持ちを集中させた。

そうでなくても、しっかりフェラされて出来上がっているし、細身の亜美の膣は本当に締まりが良い。すぐに果ててしまった。

お金のやりとりは無かった。

パパ活で、お手当は都度払いの手切れ金。これを払っておかないと、女性に愛が生じてしまって、かえって高くつく羽目になる。

そう、このコラムで書き続けてきた。

その禁をついに湯葉は自ら破ってしまった。

「また甘えたくなったら、連絡するので、会ってくださいね」

さわやかな笑顔で亜美は帰っていった。

男女の愛情云々の問題ではない。亜美が強制されずに自らの自由意志でセックスしたということに意味がある。

お金が介在したら、お金のため嫌々した、という意味で強制の延長を抜けられない。

湯葉も、清々しい気持ちで別れた。

「これからも、この娘にだけはお金あげられないな」

そう覚悟もした。



ただほど高いものはない。



この先どうなるのかさっぱり見当がつかない。

地獄への一里塚なのか、あるいは善行を施して湯葉の徳が一つ上がったのか。

数年後には結果が出ているだろう。良きにしろ悪しきにしろ、還暦近い湯葉にとって、余生の楽しみだけは一つ増えたということだ。

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