恋愛ワクチン 第十五話「電車で痴漢プレイ」
ほかのおじさんの生態は知らない。
「パパ活アプリ始めたんだけど」
女の子が話を切り出した。セックスを終えたあとのひととき。二人ベッドで横になりながら四方山話に花を咲かせる。
「どう?いいおじさん見つかった?」
「一人変わった人がいて」
「ふんふん」
マックさん食いつく。
マックさん、女の子にはいろいろ出会うけど、ほかのおじさんの生態は知らない。女の子にいつも、変わったおじさん居なかった?面白いプレイさせられた経験ない?と聞きたがる。この会話も、その流れの中でのことだ。
「電車で痴漢をしてみたい。もうそれが昔からの念願で、プレイに付き合ってくれるなら50万出すって」
「痴漢ごっこで50?」
「終電近くの〇線なら、人がまったくいないから、そこで挿入させてくれたら50、プレイだけでも40だって」
マックさん感心した。
世の中いろんな変態がいるものだ。マックさん「変態」という言葉にマイナスのイメージを持っていない。
マックさんだって自分の下半身事情を、匿名とはいえ、こうして書いている時点で十分変態だし、そもそも人間のセックスって自然界から見れば変態に満ちている。
コンドームをして避妊しながらのセックスなんて、セックスは繁殖のためという自然の摂理に真っ向から反する。
人間以外の全生物にとって理解不能=変態だろう。
ノーリスク=刺激が無いのかもしれない
同時にマックさんの頭の中では、電車内の痴漢プレイを成功させるための条件やリスクの検討が始まる。
これはマックさんが事業家である性(さが)だろう。頭の体操だ。
何といっても、駅員や他の乗客に見られて通報されたら大変だ。公然わいせつ罪になる。とても恥ずかしい。リスクが極めて高いプレイといえる。
そこを考えて、終電間際、客のいない車両で、ということなのだろうが、これって楽しいんだろうか?もし人が来てしまったら、っていうスリルはゼロではない。そこで楽しめるのかな?
「タクシーの後部座席でのいちゃいちゃなら経験あるよ、挿入まではしたことないけど」
「そのおじさん、タクシーは経験あるんだって」
「挿入の?」
「うん、運転手さんにお願いしてさせてもらったんだって」
一万円札あげれば、OKな運転手さんもいるのかな?しかし怒り出す人もいそうだけど。よく交渉成立したものだ。
マックさん、遠い昔、若い頃に夜の公園で彼女としたことはある。石のベンチに彼女を横たわらせて正常位で。あれは痛かった。彼女も痛かっただろう。
あと露出系のプレイというと・・そうそう、新幹線のグリーン車で横並びの彼女の下着を下げて、スカーフで覆って触り続けたことはある。乗務員や車内販売の子が通過していくのがスリルだった。
そのくらいかなあ。あまり公共の場での露出プレイの引き出しは多くない。
マックさん、ますは自分の過去の経験の引き出しを調べたうえで、今度は、電車の痴漢プレイを成功させるための、安全策をいろいろ考えてみた。
確か、AV撮影のための貸しスタジオで、電車内を再現したのがあるはずだ。そこを借りて、女の子と心ゆくまで痴漢プレイを楽しんではどうだろう?いちばん安全、ノーリスクだ。
しかし、ノーリスク=刺激が無いのかもしれないな。
次善として、信頼のうける部下などに自分たちを取り囲ませる。見張りを置く。万が一通報されそうになったら、「すみません、あれ、うちの社長と愛人なんです。痴漢じゃないんです」と頭を下げてもらう。私なら、これにするな。
セックスに加えてお金も欲しがる。
しかし、個人の投資家とかで、部下などいないお金持ちのおじさんには使えないかもだなあ。
50万かあ。
よほどおじさん、痴漢したいんだろうな。50万でそのムラムラが昇華されて、すっきりしてお縄にならずに済むなら、安いのかもしれませんが。
「面白そうだから受けてみたら?関心あるから事後報告お願いね」
女の子にはそう言って別れた。
後日、その話を別の女の子にしてみた。
こういうおじさんいるらしいよ。世の中いろんな変態いるよねーって感じで。
「それ、たぶんやり逃げだと思うよ」
「やり逃げ?・・」
「だって、人のいない終電でしょ?終わった後、どこかの駅でドア閉まる直前で、ダッシュで降りられたら終わりじゃん」
「あっ、そうか・・」
「出会いがアプリだしね」
「これは気が付かなかった」
「私も出会い系で昔やり逃げされたことあるよ。お金無いからATMまで付き合ってって言われて、ホテルから出て一緒に歩いてたら突然ダッシュ。女の子の靴じゃ追いつけないから見送って『やられた』って思うしかなかった。」
「悔しいね」
「うーん、その時は気持ち良かったから、まあいいや、って感じだった」
悔しくなかったんだ・・
男も女もセックスは好き、女は男よりも欲深いから、セックスに加えてお金も欲しがる。しかし、お金貰えなくても、よく考えてみると大して損したわけでもない、そんな感じでしょうか、少なくともその子にとっては。
マック
※「恋愛ワクチン」に登場する女の子は、マックさんが実際にデートした複数の相手とのエピソードから再構成しています。まったく一致する女性会員は存在しません。またデリケートな話においては、重要な個所を変更しています。