恋愛ワクチン 第三話「セックス修行」
『恋愛ワクチン』
恋やセックスの欲求は時として病気のように人生を破壊します。これを予防するのが恋愛ワクチン。
入会費とセッティング料を払えば、誰もが接種でき、安全に疑似恋愛を体験できます。
マックさんは、ナイフとフォークを4時の方向にまとめて置いた。
「この後だけど、もしよかったら1時間くらい付き合ってくれたら5万円。どうだろう?」
「是非お願いします」
真面目な顔で女の子は答えた。細身でショートカット、身長もあるモデルのような素敵な子。知的な面立ちで、実際TOEICも高得点だと言う。
そんな彼女が、「是非」という言葉を使った。マックさんはあれっと思った。
今の今まで緊張した表情で、こんなカチカチでは今日は無いかな、と覚悟を決めていたので意外だったのだ。
また、女の子たちは、マックさんが上のようなオファーを口に出した直後は、黙って頷くことが多い。
「はい」とか、「いいですよ」とは言っても、「是非」とは言ってくれない。
がっついて見えるのが嫌なのだろう。
そこで「是非」という言葉が飛び出してしまう子である。
よほどお金に困っているのか、
セックスが好きなのか?
ベッドは、彼女のリードで始まった。
いきなり咥える。そして半端なく大きなストローク。気持ちいい。
これは良い子に当たったかなとしばらく堪能する。
普通女の子ってのは、ある程度であごが疲れて一服する。そしてまだ?っという感じでこちらを見て、反応が無ければ再開する。
男性によっては、延々とさせる向きもあるそうだが、マックさんは心優しいので、適度なところで攻めの交替を買って出る。
すなわち、女の子を仰向ける。
しかし、この子は、休みを取らない。取りつかれたように舐め続ける。マックさんが若かったら、確実に一発射精していただろう。
ちなみにマックさんは、年齢はそこそこ重ねている。
女性であれば閉経して数年といったところか。
若い時は一晩に9回も10回も射精できたが、さすがに寄る年波には勝てない。
幸いマックさんには、医者の友人がいる。
彼とはワイン会仲間で、盛り上がるとその手の自慢話に花を咲かせる。
友人の自慢は、薬が「売るほどある」点で、そりゃあそうでしょう、医者なんだから。
マックさんもその薬を売ってもらった。
「ザルディア」という薬なのだが、確かに効く。どう効くかというと、服用した翌朝、なんと朝立ちしていた。
性欲の亢進はない。しかし勃起している。妙な感覚だが、気分は良い。
作用機序を調べてみた。勃起した海綿体には血液が流入して固さを作っている。この薬は海綿体からの流出側の血管をきゅっと締めて、勃起を維持するものらしい。
なるほど、だから性欲に変化はないが、勃起は持続するわけだ。
話は戻って、ザルディアを毎日服用しているマックさんは、勃起の持続力はある。
しかし、精液を造る力は衰えているので、射精はしにくい。
若い頃と違って貯まりにくいのだ。なので、彼女のテクニックにもなんとか持ちこたえることが出来た。
しかし気持ち良い。
何者なんだろう?この女の子は。
マックさんは大いに満足して彼女を抱き寄せた。
多くの男性は、射精後は「賢者タイム」と言って、女性と離れて一人で煙草を吸ったりしたくなるようだが、マックさんは脳が女性的なのか、射精後は相手が愛おしくなる。
情がわく。
時にはそのまま一時間以上抱き合ったまま、話に花を咲かせる。
マックさんにとって、この時間こそが至福である。
女の子のこれまでの性遍歴やら身の上話まで、話題は尽きない。
マックさんにとって、ここからが女の子との本当のお付き合いになる。だから早くここまで到達したい。
そこで、今回の彼女が明かしてくれたお話が以下である。なんだか千夜一夜物語みたいだね。
彼女には、はじめて付き合った彼氏がいた。3年ほど前のことだ。
その彼氏が浮気したのだそうだ。
浮気されたら、普通は女性は怒ると思うのだが、この知的な女性は違った。
自分がセックスが下手なせいに違いないと自責したのだ。
・・彼女は処女だったのだから、上手も下手も無いと思うのだが、とにかく彼女はそう結論付けた。
それから彼女の修行が始まった。
セックスが上手になりたい。
次に彼氏が出来たときには、絶対に浮気させたくない。
手あたり次第、と言ったら大げさだが、美人だし、言い寄ってくる男性も多いのだろう、たちどころに30人ほどを経験した。
自分に対して厳しい彼女は、それでは満足しない。そうだ、交際クラブというのがある。
ここに登録して、いろんな年齢層の人と交流して、さらにスキルを高めよう。
だから冒頭の「是非」という言葉になったようだ。
是非、私に一手ご指南ください。
彼女とはその後も定期的に会っている。
だって気持ちいいんだもん。私がマットプレイの話をしたら、早速ソープランドのマット講習を受けて来て実践してくれた。
元々美人なので、ソープのスカウトにはしょっちゅう声をかけられていて関心はあったそうなのだが、熱心なことだ。
彼女はまだ彼氏を作るつもりはない。
スキルが未熟だからだそうだ。
すべてが私にとっては好都合で結構なお話なのだが、こういう女性もいるんですよ。
世の中いろいろ。(続く)
マックさん