しりとりで綴る交際倶楽部奮闘記5 後編
いとしのエリー → リケジョ
硬軟取り混ぜた会話と食事を楽しんだ。
コメント欄でのある程度の交流があったから、少なくともジョーは初めて会った気がしなかったが、お話を伺うと当然ながらJasmineさんの事は知らないことばかりである。
マックさんによれば(そしてジョーも同感なのだが)Jasmineさんは「断らない女性」だ。
こういう書き方をすると誤解を招きそうだが、極力男性の期待に応えようとする気遣いのできる心優しき女性だ。
男性側からするとJasmineさんの仕草や話し方そして雰囲気が「そそられる」女性でもある。
だから職場その他で、お誘いをされることが多いのもよく分かるし、価値観が柔軟で相手の良いところを見つけ受け入れてくれるから尚更だ。
もちろん、大本命の「大好きな彼」の存在が前提にあるのだけれど。
まあ、ジョーの場合、特に性的に倒錯しているので、この想像が的を得ているかは全く自信がない。
それにしても魅惑的な時間はあっという間に過ぎるのはなぜだろうか。
「まあまあの時間になりましたけど、美術館にお付き合いいただけますか」
「もちろんです」
「広尾の山種美術館にお連れします。タクシーで移動しましょう」
「前は何度も通ったことがあるけど、入ったことはない。楽しみです」
何度か書いたけれど、ジョーがユニバース倶楽部を利用する目的の一つが美術館への同伴?である。
地元の美術館へは妻とよく出かけるし、年に何回か妻が上京することもあるので、その時は必ず二人で美術館に立ち寄る。
ただ妻はプロなので(一応画家です)、鑑賞スタイルのレベルがジョーとは違い過ぎてついていけない(一日中美術館に滞在しホテルに帰ってからも夜通し模写)。
それならば安いとは言い難いオファー料を払うよりじっくりと他の女性を見つければよいんだろうけどジョーはそういう関係になるまでのやり方がよくわからない。
それにユニバース倶楽部に登録している女性は一般的に芸術全般に関心が高いから「美術館へ行こう」とか「芝居を観ましょう」と誘うとあまり断られないというのもある(落語もオススメです)。
山種美術館は日本画専門の美術館でジョーお気に入りの美術館の一つだ。
最寄りの駅からは少し離れているけれど、タクシーで移動すればアクセスは悪くないし、周辺にはこじんまりとした落ち着いたレストランやカフェもある。
小さな美術館だから1時間もあれば割とじっくり鑑賞できるから限られたデート時間でも楽しむことができると思う。
何より上野のように混んでいないのも有難い。
そしてどうしてもJasmineさんをここへお連れしたかったのは、今回の企画展が近代日本画のエース(とジョーは思っている)速水御舟の作品展だからだ。
数年前まで日本画についてほとんど知らなかったジョーだが、彼の作品により日本画に目覚めた。
作品の好き嫌いはパーソナルなものだし、強制する、或いは強制されるものではないが、ジョーの好きな作品を鑑賞して貰いたいという気持ちもあった。
会場入り口で一旦解散するのが、ジョーのスタイル。
イヤホンガイドを借りてJasmineさんに渡す。
「Jasmineさん、先ずは自分の目で鑑賞してそのあとにガイドを聞くとぐっと絵が身近になりますよ」
我ながら少し偉そうな物言いですが、もちろんそんなつもりはない。
美術鑑賞に当たっては「補助線」という考え方が重要であるとジョーは思う。
自分の目で観ることが何より大切なのは言うまでもないが、そこにちょっとしたヒントや知識(補助線)を入れることで、絵の見方がぐっと拡がることがあるからだ(これは妻に習ったんですけどね)。
Jasmineさんの時はしなかったが、ジョーには美術館デートの時に提案するゲームもある。
それは予算を決めて購入前提で気に入った絵を値踏みするのだ。例えばこんな風に。
「本日の予算は50億。欲しい絵にそれぞれ値段をつけてみて」
このゲームをすると大抵の女性の目は真剣になる。
その女性の金銭感覚が明らかになるという効果?もある。
まぁ知りたいような、知りたくないような効果だし、ナナ姫のように携帯アプリの電卓を使って真剣に値踏みをしているのを観ると本当に買わされそうで怖いですけどね。
今回の展覧会は全部で120点。
一見すると数が多いように思えるけれど、半分は写生や素描だから、展示数が多いとは感じない。
ふとJasmineさんに目をやるとゆっくりとしたペースで絵を鑑賞していらっしゃる。
「断らないJasmineさんを無理やり誘ったかなぁ」と思っていたから正直ホッとした。
絵は何らかの興味がなければゆっくりと鑑賞できないものだからだ。
鑑賞後は館内のカフェで感想戦。
Jasmineさんはコーヒー、ジョーは抹茶を注文した。
今回のジョーのベストは「牡丹花」。
その葉は緑で彩色しているが、本来白いはずの牡丹は墨(つまり黒)で描いている。
墨の濃淡で観るものに白を想像させる作品に仕上がっている。
改めて御舟の力量に圧倒された。
「どうでした?」
「思っていたよりずっと良かった。私、昔から写生は割と得意なの。写生もたくさん展示されていたじゃない?これなら私でも描けそうと思ったけど、それが本画になると一変して。その変化が興味深かった。」
Jasmineさんは気遣いの人だから、多少の社交辞令?はあるだろうけど、彼女の言葉はジョーを喜ばせた。
美術館デートは成功のようだ(性交じゃないよ)。
これからも仲良くできそうだ。
その後も話は続いた。
ジョーの質問に包み隠さず答えるJasmineさん。少なくともジョーは距離がぐっと近くなったように感じていた。
ただお話がとっても楽しかったので、初回ルールの4時間が過ぎていたのは申し訳なかった。
兎にも角にも帰路につかねばならない。
「僕はタクシーでホテルに帰ります。途中までご一緒しましょう」
「よろしくお願いします」
タクシーを拾うため美術館を出る時、Jasmineさんが呟いた。
「ジョーさんにはプライベートのことを随分お話ししたから、もうベットインはできませんねえ」
まずい展開である。
言下に否定しなければならない。
「僕はやる気満々ですけど。正直に言うと今日もずっとムラムラしてました。次回は是非お願いします」
と言いながらJasmineさんの魅惑的なお尻に触れた(ジョーは尻フェチです)。
Jasmineさんは少し驚いたようだったが、声を上げるような無粋な女性ではない。
ジョーの期待?に応えるかのように彼女の右手がジョーの左手に触れる。
そして手を繋いだままタクシーに乗り込む。
タクシーに乗ってからも手は繋いだままだ。
というより、指が絡み合うようにジョーは感じていた。
ジョーは妄想族だから、この官能的な触感から独自のワールドが拡がる。
絡み合う指はJasmineさんとの官能的なキスを連想させた。
さらに進んで官能的な腰使いも。
ジョーにとっては「やったも同然」である。
会った瞬間?に後部座席で挿入したマックさんからすれば信じ難いかもしれないが、同じ後部座席だし、運転手さんともミラー越しに目が合ったし、変わらないですよね?
あっ、やっぱり違うかも。
Jasmineさんが下車した後、ジョーは射精後のような心地よい疲労感に襲われていた。
一旦ホテルに戻り、その後はオサム君と打ち合わせをした後、オサム君に連れられて、ワイン業界の立食パティー。
何とナナ姫も参加していた。
少し会話を交わしたけれど、この日は業界のパーティだから、他の業者との歓談に忙しい。
こういう時のナナ姫は本当につれないけれどそこがまた魅力だから仕方がない。
我ながら困った性壁です。
そして大きい声では言えないけれど、ダブルヘッター(この日は他のユニバース女子にオファーしていた)のため、待ち合わせ場所に移動。
いろんな意味で経験豊富なジョー好みの魅力的な女性でしたけれど、容姿は画像の50%引き(かなりふくよかでいらっしゃいました)。
しかも「お手当てはゴム付き、10で」と言われげんなり。
少しだけ多めに交通費を渡して食事解散。
ダブルヘッターはジョーには向いてないですな。