恋愛ワクチン第九十二話 素人処女

「私、自分は『素人処女』だってことに気が付きました」
そう語ったのは真美ちゃん。二年前に19才でユニバースに入会し、処女を卒業した娘だ。
卒業の相手はマックさんでは無い。マックさんは二人目の男性。そのほかにも何人かのパパと交際し、経験値も上がってSEXの快感も覚えた。
しかし同世代の男性との経験は無い。お金を介さないSEXもしたことがない。
「素人童貞」という言葉がある。風俗で童貞を卒業したが、彼女が出来たことは無く、お金を介さないSEXをしたことが無い男性を呼ぶ言葉だが、真美ちゃんはその逆バージョン、「素人処女」だということに気が付いてしまった。
「私、同世代の男性と普通の恋愛なんて出来るんでしょうか?なんだか不安です」
「真美ちゃんまだ21才でしょ。そんな不安抱える年齢じゃ無いよ。自然に花が開くように時期が来たら心と体がそれを求めていくから、今は好きなようにしていれば良いと思うよ」
こういう娘は最近多いようだ。
マックさんは真美ちゃんを日帰り混浴温泉にときどき連れて行く。
最初は恥ずかしがっていたが、注目されることは好きだ。
ちょっと話からは外れるが、混浴温泉の楽しみ方について解説しておこう。
「ワニさん」という言葉がある。そういう目的で来ている単独男性のことで、なぜワニさんというかというと、水に潜んでじっとして獲物が来るのを待ち構えているから。獲物とはもちろんカップルさんや単独または複数女性のことだ。
ワニさんには陽気なワニさんと陰気なワニさんが居る。
混浴温泉を良く知らない人は、ワニさんと言えば陰気なワニさんを想像するかもしれないが、実際には陽気な常連ワニさんが多いというか、場を仕切っている。場を仕切っていると言っても、勝手にカップルさんや女性に近寄って来たりはしない。あくまで、声を掛けられるのを待つスタンスだし、「いい天気ですね」とこちらから少し声掛けでもすれば、たちまちのうちに和やかな歓談が始まる。ワニさんたちのコミュ力は高い。
ワニさんたちにとっては、温泉で見知らぬ女性と一緒に入浴したりチラ見したりするのが至福なのだ。そういう無害な性癖の人たちである。ガブっと噛みついてきたりはしない。
さらにちょっと追記しておくと、これは本当に何人もの女の子たちがそうなので、決してマックさんが都合よく話を作っているわけでは無いのだが、混浴温泉でワニさんたちに全裸を披露していると、女の子たちの体付きが綺麗になっていく。
見られる機会があるということで、普段から心掛けるようになるからなのか、見られることによって「美人化ホルモン」のようなものが分泌されるのか、そこはよく知らないが、とにかく魅力的な体付きになっていく。女性の体は不思議なものだ。
真美ちゃんとの5回目くらいの混浴温泉デートだっただろうか。その日は常連のワニさんが二人だけでマックさんと真美ちゃん合わせて4人。せっかく車を飛ばして来たのにちょっと残念だった。
そこに一人、若い男性が入ってきた。
初めて見る顔だ。マックさんが声をかける。
「こんにちは」
「こんにちは」
笑顔で挨拶を返してくれた。
真美ちゃんに聞いてみる。
「あの男の子どう?顔立ちイケメン風だし、感じ良さそうじゃない?」
真美ちゃん、ちょっと顔を赤くして恥ずかしそうに頷く。やっぱり好みのタイプのようだ。
混浴温泉の日帰り入浴って、若い男性はあまりいない。たまにいたとしても陰気なワニさんだ。挨拶しても返事もせず隅っこでじっとしている。
そういう人は陽気かつ元気な常連のワニおじさんたちが徹底的にハブるので、二度三度は来ない。無法地帯ならではの自治システムがそこにはある。
マックさんは真美ちゃんをさらに追い込んだ。
「真美ちゃん、あの男の子とハグ出来る?」
真美ちゃん、恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、小さく頷いた。
マックさんは男性に声をかけた。
「すみません、この娘がハグして欲しいみたいなんですけど、ちょっとお願い出来ませんか?」
若い男性は。
「えっ?ハグですか?」
驚いている。あれ?ひょっとしてこの人、ワニさんじゃなかったのかな?
「あ、もしかしてただ温泉に入りに来ただけの方ですか?」
「ええ、釣りが趣味で、汗と塩水を流そうと思って寄ったんです」
「それは失礼しました。混浴温泉って、そういう方ももちろんいらっしゃるけど、僕たちみたいに男女で仲良く遊ぼうって目的の人たちも来るんですよ。気を悪くしたらごめんなさい」
「いえ、そうなんですね。しかし、彼女さん、綺麗な方ですね」
まんざらお世辞でもなさそうだ。目は真美ちゃんに釘付けである。
「こちらにはよくいらっしゃるんですか?」
「ええ、休みの日に海釣りしたあとは、このあたりの立ち寄り湯を使うんですが、ここは初めてです。しかし彼女さん綺麗ですね」
「よかったらハグします?笑」
「いやあ、彼女がお嫌でしょうから」
「いや、嫌じゃ無さそうですよ」
「しかし申し訳ないです。本当に綺麗な方ですね」
「お若いようですが何才でいらっしゃいますか?」
「21です」
「じゃあ真美ちゃんと同じじゃん。どちらのご出身ですか?」
出身地は違っていた。同じ中学だったりしたら面白かったのに。
「じゃあ、真美ちゃんそろそろ出ようか?」
真美ちゃんは頷いてマックさんに手を引かれて立ち上がる。股間が彼の目に露わになった。
そのまま歩いて彼の横を通って脱衣所へと向かう。常連のワニさんの一人が後に続いた。この人、女性が下着を付けるのを見るのが好きな性癖なのだ。
するとその後になんと、その21才の若者が続いてやってきた。
お、釣れたよ。
若者、釣り師なのに釣られてる笑。
まあ餌が美味しそうだもんな。
脱衣所で真美ちゃんが体を拭き始めた。マックさんは背中を拭いて手伝ってあげる。
常連のワニさんはしゃがんで真美ちゃんの裸体を見ている。若者はその後ろで立ったまま手持ち無沙汰な様子だ。
「いやあ、ほんとに綺麗な方ですね」
「やっぱりハグしてみませんか?彼女いいって言ってるし」
「君、いまハグしとかないと、絶対あとで後悔するよ。こんなチャンス滅多には無いんだから」
常連のワニさんも背中を押す。
「本当にいいんでしょうか?」
「真美ちゃんいいよね?」
真美ちゃん顔を赤くして、若者とは目を合わせず、マックさんの方を見て小さく頷いた。
「じゃあ失礼します」
意を決したようだ。若者は前に出て真美ちゃんをハグした。真美ちゃんはタオルを体に巻いたままだ。
「これは取った方がいいよ」
マックさんがタオルを引きはがした。
若者は真美ちゃんの上半身を抱きしめてはいるが腰は引けている。勃起しているからだ。ペニスが真美ちゃんに当たらないように気を遣っているのだろう。
「下半身もっとくっつけた方がいいね」
マックさんは二人のお尻を両手で押してくっつけてやる。
21才の男女が全裸で抱き合っている。いやあ美しい。
海辺だし、三島由紀夫の「潮騒」のクライマックス場面のようだ。
二人ともスタイルが良いし彫刻のようでもある。マックさんと常連ワニさんはしばらく鑑賞して堪能した。
「じゃあ、ハグもしてもらったことだし、真美ちゃんそろそろ行こうか」
真美ちゃんは頷いて服を着始める。若者はそこに立ったままだ。目は真美ちゃんに釘付けのまま何も言わない。
服を着て脱衣所を出た。
旅館の廊下を歩いていると、少しあとから若者が付いてきた。大急ぎで服を着て後を追ってきたようだ。
マックさんは振り返って若者に向かって笑顔で会釈した。真美ちゃんもマックさんに倣った。
若者もこちらを向いて会釈した。そしてそのあと少し迷ったようだが、振り返って温泉の方へと戻っていった。
「中学や高校の頃に、ああいう男の子いなかったっけ?好きな女の子の後を追って、何も考えずについつい付いてきちゃう子」
「いましたね」
真美ちゃんはにっこり笑った。
なんか良いものを見せてもらって、マックさんの心がちょっとだけ若返った気分になりましたってお話でした。
あの若者の記憶に、全裸の真美ちゃんがずっと刺さり続けてると考えるとなんか楽しい。

このカテゴリーの関連記事

  • 外部ライターさん募集
  • ラブホの上野さん
  • THE SALON
  • join
  • ユニバースサポート