【実録】「パパ活」デビュー戦②──闇属性の杏奈さん
【実録】「パパ活」デビュー戦①──清楚な銀行員、杏奈さんの続きです。
<前回のあらすじ>
初めてのパパ活でマッチングした女性は、女優の松岡茉優さん似の銀行員、24歳の杏奈さん。期待に胸を膨らませて新宿のホテルのラウンジで待つ僕のもとに現われたのは、確かに写真は本人のものだが、なぜかお笑いコンビ「パーパー」のあいなぷぅさんに似た女性だった。しかも全身から負のオーラを漂わせ、目が死んでいる……。
頭の切り替え
杏奈さんの写真とのあまりの違いように驚き、呆然とし、暗澹とした気分になった僕でしたが、すぐに気を取り戻しました。僕はまず、脳内の松岡茉優のデータを消し、ゼロベースで考えることにしました。先入観をなくし、どんな状況だろうとポジティブに考えるのは、仕事の鉄則です。
あいなぷぅを少し美人にした感じ→普通にかわいい女性→僕と彼女の年齢差は20歳以上→全然いける!
そう考えた僕は、努めて前向きに話し始めました。
が、しかし、杏奈さんは総じて暗く、しかもどこか投げやり──。
話もなかなか続きませんでした。僕が気に入らないのかとも思いましたが、それにしても妙な感じなのです。
それよりも気になったことがあります。
それは、彼女の目が死んでいるということでした。全く生気がない──。
まずは無難に、新宿周辺の美味しいお店の話、続いて、コロナ禍と最近の生活や仕事の話、出てきた料理の話、今の自分の進めている仕事や関心事の話などをしましたが、彼女は、あまり話に乗ってきません。
多少、良好な反応があったのは、彼女自身の仕事の話とパパ活の話だったので、話をそこに絞ることにしました。すると、彼女は段々と、口を開きだしました。基本的には、愚痴でした。
「東京の生活って、すごくお金がかかって、うちの銀行の給料、すごく安いんですよ。残業はできないから、手取りで15万円くらいなんです。副業も禁止だし、古い体質で仕事中もすごく制約が多いし、なのにこんな安いなんて、生活が大変です」
彼女は、富山県の大学を卒業して、都内の小さな銀行の支店に勤めているとのこと。待遇に強い不満があるようでした。
「それで、2年前にパパ活はじめたんです。生活の足しにって。オファーが来たら、大体OKしているんで、もう300人くらいの人と会いましたねー。でも、変な人ばっかりだし、ドタキャンが多かったりして、大変なんですよ……」
僕が、パパ活が初めてで、彼女が初めて会う女性だということは伝えています。
しかし、この清楚系で少し地味なタイプで、しかも小さな地銀とは思うが銀行員の女性が、2年間で300人とは驚きました。しかも大半の相手と「大人」をしている様子です。世の中は、僕の想像をはるかに超えているのかもしれない、そう思いました。
彼女は、2杯目に口をつけました。ミモザです。
そして、彼女の話は、段々と止まらなくなってきたのでした──。
魔都「東京」が生み出した闇属性モンスター
「待ち合わせでそのまま帰られたことも、ありますよ。ひどいですよね。削られますよ。でも、生活のために週3~4回は会うようにしていて、たくさんの人とやり取りしているから、連絡だけでも大変だし……」
「1回、西麻布の地下のバーに呼び出されたときは怖かった。暗い個室に通されると、70歳くらいの黒づくめの格好をした目つきの鋭いおじいちゃんがいて、両隣にその人の部下みたいなホスト風の若い人が座っていて……。すごい豪華な料理が次々に運び込まれてきたんですけど、恐怖で食べた気がしなくて。何を話したかも覚えていない。その人、有名なAV監督だったみたいなんですけど、終始むすっとしていて、食事が終わると、10万円が入った封筒を渡されて、『あんたは、俺に見合う女じゃない。食べ方も汚いし。これやるから、もう行きな』って追い出されました。何がなんだか分からなかったけど、そのときは無事に出られてホッとしました。集団レイプされるかとおもった……。駅までついてたら、しばらく立てなくなっちゃって……」
「ほかにも怖い目に遭ったことあります。ストーカーです。最初はいい人かなって思ったんですけど、段々こっちがすぐに連絡を返さないと切れるようになって、そして1回家まで後をつけられて、それから何度も家に来られて、最終的には引っ越す羽目になっちゃって……」
僕は、なかば呆然として、彼女の話を聞いていました。話としては興味深いですが、彼女のような女性の口から、淡々とこのような話が出る現実に、まだついていけてませんでした。東京での生活が彼女を変えたのでしょうか。
「でも、生活のために、パパ活しなきゃいけなくて。15万じゃ、東京の生活できないですよ。本当はいろんな人と会うんじゃなくて、安定した定期の人が欲しいんですけど、なかなか長く続かないですよね……。急に連絡取れなくなったり、お手当を減額されたり、ストーカー化したりとか……」
「24歳くらいになると、需要が少なくなるんですよ。だから、若いうちにもっともっとパパ活して、数千万円くらい貯金しておかけばよかったと後悔しています」
僕は、途中から、かなり引いていました。
彼女の富山での大学時代は分かりません。地方の女性は、東京よりも乱れていないなどと思うのは、幻想だと思います。しかし彼女の場合は、東京に出てきたことが、人生を大きく変えたような印象をもったのです。東京の女性としての生活を維持するために、体を売って心を削る──。まだ見た目は清楚だが、投げやりな彼女の目は確実に濁っていました。
こう言っては悪いですが、低成長・デフレ時代にコロナ禍が加わった魔都、東京が生み出した、新手のモンスター(闇属性)のように思えたのです。
(続きます)
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