宇宙倶楽部女子との旅 前篇
宇宙倶楽部女子の心身問題
【まずは寿司宣言】
いきなりで恐縮だけれどジョーは寿司が好きだ。その中でも少数派だと思うがタコが一番のお気に入り。シャリと合わせるのも悪くないけれど、煮タコには特に目がない。大根と合わせてタコの桜煮と称される一品とビールや日本酒を併せていくのがジョーにとっては至福の時だ。タコの桜煮は手間がかかる割に高い値段が取れないからなのか、全ての寿司屋でいつも用意されているわけではないのが残念だけれど。
タコ好きのジョーだから「タコの心身問題」(ピーター・コドフリー=スミス著 みすず書房)を書店で見つけたとき、すぐ買い求めたのは自然なことだった。ちなみに昨年のジョーランキングベストワンが本書だ(誰も知りたくないと思いますけど苦笑)。
本書から得た知見は多いが(ますますタコ好きになった)一番最初に驚いたことは著者が生物学者や海洋学者ではなく、哲学者ということだ。そして哲学には永遠の?テーマとして「精神(心)と物質(身体)」があるらしい。趣味のダイビングを通じて海中でたびたびタコに遭遇した著者はその経験から哲学者らしく?このテーマをタコに当てはめて考察しようとした。つまり「タコに心(意識)はあるか」という命題だ。
著者によればタコには「(人間とは異なっているが)意識があるのは間違いない」という。タコは頭足類に分類され、比較的大きな脳を持ち、複雑な神経システムを持っていて好奇心旺盛だ。基本、集団で行動することは少なく、単独行動を好み、時に危険を省みず例えば人間に近づきちょっかいを出そうとするらしい。著者は何度も海中で好奇心旺盛なタコと遭遇し、彼らとのコミュニケーションを楽しんだ。それでいてその好奇心が継続することは稀で、現代的な言葉表現すればタコはかなり「ツンデレ」でそれゆえに著者を益々、魅了していった。
前述のようにタコはその体重からすると大きな脳と八本の足を持つ。しかし他の生物に比べても高度な機能を有する脳が全ての身体機能をコントロールしているわけではない。驚くことに足(腕?)の上腕部にも脳に似た機能があり、そこもまた他の足の部分をコントロールしているという。一般にタコ踊りと称される動きは脳が全ての身体機能をコントロールしていない証左だ。そして著者はタコは脳だけでなく、足にも心があるのではないかと推測している。つまり一つの生物に違った二つの心があるというのだ。あくまで著者の推測だが(共同の研究者は海洋学者だから一定の科学的説得力は持つだろう)是非はともかくとして面白い推測だと思った。
【女子はタコなのではないか説】
本書の読了後、影響を受けやすいジョーは誤解を恐れずに書けば「宇宙倶楽部女子もまたタコなのではないか」と思うようになった。決して揶揄しているわけではない。ジョーのささやかな経験によれば宇宙倶楽部女子もまたタコのように二つの心があるのではないか推測できる場面が少なくない。そしてそれはまた彼女たちの魅力でもある。多くの女子が好奇心旺盛だがツンデレなのも(もしかしジョーにだけ?)タコとの共通点だと思う。
宇宙倶楽部女子はしばしば脳と身体が別の動きをする。例えば「このオッサン気持ち悪いな」と心の中で呟いていたとしても激しく腰を振ったり、女陰で締め付けたりし、オジサマ方を魅了していく。長年ジョーは時として心と身体が反比例すること苦しんできたが宇宙倶楽部女子はそれぞれの部位にタコのような二つの心を持っているのだと考えることで説明できると思うようになった。そこでやや唐突ですが、今回は旅における宇宙倶楽部女子の心身問題を男性であるジョーの視点から考察してみたい。
【旅はDNAに組み込まれているから避け難い】
なぜ旅なのか?まずはその点ついて綴ってみる。
ジョーは好きな女子ができると旅に誘いたくなるが、宇宙倶楽部男性諸氏の中にも一定の割合で女子を旅に誘う方々がいらっしゃるだろう。旅の醍醐味の一つが非日常性にあり、オトウサマ方はそれを強く求めているからだ。しかしオトウサマの旅における振る舞いを起因としてさまざまな非喜劇が繰り広げられているのではないかとジョーは想像する。なぜってジョーも旅での振る舞いでしばしば失敗を繰り返してきたからだ。
もう一度繰り返すがなぜ旅なのか?それはジョーにとっては哲学的な命題だからだ。そこでまずはジョーのささやかな女性遍歴を披露することでこの命題の回答としたい。
【初めての彼女は真智子(本名)←笑】
初めて彼女と呼べる女性ができたのは高校2年生の秋だ。名前は真智子。ジョーの通っていた学校の近くにあった女子校に通っていた。互い生徒会長で、よくある話?だが文化祭で知り合って付き合うことになった。
真智子が通っていた女子校は世間的にはお嬢さま学校という評価を受けていたが、実際は頭も尻も軽いという我々男子校の生徒からみれば理想の女子校だった。真智子もそんな学校のタイピカリーな女性の一人だ。紆余曲折があって付き合うことになった時の真智子の第一声は「私の元カレは30歳過ぎなの」だった。
今だったら色々と妄想が膨らむし、色々と仕込まれただろうと考えるだろうけれど(実際仕込まれていた)当時は硬派の生徒会長を自認していたから「へえー、随分年上の彼だったんだね」とその後の悲劇(喜劇?)を思い巡らすことなく呑気に返事したものだった。
真智子との付き合いはなんとなく継続していて高三になった。性ホルモンの活動が最も盛んな時期だからもちろんジョーは悶々とする日々。付き合い始めてすぐに有栖川宮公園でキスをしたが、それ以上進めずにいた。股間をパンパンにしつつ、「To be or not to be.That is the question」と呟きながら自分で自分を慰めていたのだった。それでもエセ硬派のジョーが出した結論は「やっぱり高校生がセックスしたらまずいだろうよ。そもそもどこでするのよ?」だった。
そんなジョーに痺れを切らしたのか真智子は「◯◯君って週に何回くらいオナニーするの?溜まったらどうしてる?」と直球の、そして普通の女子高生なら絶対しない?質問(多分)をジョーにしてくる。ちょうど麻布十番のたい焼き屋で夏季限定の氷あずきを食べていた時だったので、あまりに直球の問いかけにトッピングで追加した白玉を喉に詰まらせた。慌てて麦茶を飲んで事なきを得たが女子に翻弄されまくるというジョーの性癖はこの時から始まったのだった。あれから四十年以上経過した今でも変わらず翻弄され続けているのは我ながら情けない。
それでも一応?受験生だったし同級生の多くは赤門志望だったから劣等生だったジョーも一応勉強のフリだけはしてみた。しかし成果は上がらない。模試を受ければ全てE判定でコメント欄にはご丁寧に「志望校変更の要あり」と書いてあり、益々自信を失わせた。
そんな時は現実逃避に限る。当時のジョーは今よりずっと文学少年だった。愛読していた北杜夫のエッセイに触発されて気分転換に?夏休みのある日、彼が愛した上高地への旅に真智子を誘った。旅とは呼べないかもしれない。だって日帰りだったから。しかも40年以上前の話だから思い出せないことも多い。しかしながら40年前の話だからこそ、自分に都合よくそして美しくリメイクされセピア色の映像と共にジョーの脳内にインプットされている。
映像をスタートさせてみよう。真智子とは早朝、新宿で待ち合わせをした。始発の「あずさ」(2号ではない)に乗って松本を目指す。新宿でお弁当を買って車内で食べたような気もするが、セピア色の映像ではそのシーンは映し出されない。
松本駅からは上高地行きのバスに乗る。当時でさえ、夏の上高地は人でごった返していた。河童橋では人だかりができていた。しかしそこを通り過ぎると人の波はグッと少なくなり、北アルプルの山並みを見上げながら梓川沿いを歩く。エッセイの描写通りの煌めくような眺めだ。二人に注ぎ込む夏の陽の光は熱を帯びているが、川の冷気とせせらぎの音で暑さは全く感じない。そして北杜夫もそうしたように川べりに降りて二人で梓川に手を浸せば二人とも冷たさですぐに手を引っ込める。大好きな真智子が歓声を上げるがここのシーンだけは音声入りだ。特に何をしたという訳ではない。明神池まで歩き、そのままバス停まで引き返し、松本駅から再びあずさに乗って新宿まで戻ってきただけだ。そして京王プラザホテルの樹林(今も営業中なんだね。当時は24時間営業だったけど)でカレーを食べたところでこの映像はエンドマークが映し出されるのだった。
そうだ、忘れてはいけないシーンについて触れておかなければならない。樹林を出て急いで新宿駅に向かった(終電が迫っていた)。改札で別れる時、真智子は言った。「◯◯君は度胸がないのね。男は度胸が肝心よ」
基本察しの悪いジョーであるが流石に真智子の真意は分かる。でも終電の方が気になるジョーは「これって『三四郎』の一節だよなあ」と思いながら最終の中央線に駆け込んだ。文学青年って困ったもんですな。
宇宙倶楽部女子によく尋ねられることがある。
「どうして旅に行きたがるの?」
残念ながら批判的なニュアンスの場合が多い。おそらくだけど倶楽部女子の頭の中にはいろんな感情その他が駆け巡っているのだろう。
・たとえ彼氏であっても物理的に無理
・そもそもオッサンとは無理
・場所が無理・お手当増額じゃないと無理
他にも色々と理由があるだろう。しかしながらジョーの返事は決まったいる。「好きな人と旅に行きたくなるのはDNA組み込まれているから」だ。誰も納得しないのは残念だが。
諸説あるようだが、現人類はアフリカで誕生したという説が有力だそうだ。そしてさまざまな理由や事情から彼らは数万年かけて世界中へ旅に出た。移動(旅)する際の単位については分かっていることは少ないが、好きな人を含む集団?と旅に出たに違いない。そうなのだ、旅する精神はDNAに組み込まれているから抗い難いのだ。という訳で今回のコラムは旅に関するジョーの懺悔記録でもある。心して読んでね。
【マリのこと】
宇宙倶楽部に入会する前、ジョーはマリと付き合っていた。最初に出会った時、マリは大学を卒業したばかりだった。違う会社だったけど、同じ業界に属していて週に2回は顔を合わせていた。食事を一緒にすることもあったが、他の社員が同席することの方が多かったし、しばらくの間はプライベートな付き合いは一才なかった。
ご存知のように?ジョーは外見も中身も洗礼されているとは言い難い人間だ。白玉氷あずきを注文したら必ず白玉を喉に詰まらせてしまう。だからマリがどうしてジョーの好意を受けれ入れてくれたか未だに謎である。ただジョーは楽しいことの好きな人間で突拍子もないことを計画したり実行したりするのは得意だからマリはそこを気に入ってくれたんだと信じたい。兎にも角にも楽しい楽しい七年間だった。
マリとは同じ業界だし付き合いは慎重さを要した。だから大っぴらにデートすることは少なかったし、二人だけの逢瀬は月に1回程度だった。こちらには、そしておそらくマリにも愛人という発想がなかったから、基本お手当を渡すこともなかった。ただお願いされた訳ではないがマリは資格を習得するため学校に通っていてカッコつけたくてその授業料をジョーが負担したことはあった。それほど大きな金額ではなかったし、マリには必要以上に感謝されたから悪い気はしなかった。別れる時を除いてマリからお金を要求されることもなかった。そもそも払う必要もないと思っていた。今から思うとジョーは随分傲慢だったと思う。なぜって若い魅力的な女性の時間を奪っていたのにそのことに無自覚だったからだ。せめてもの救いは別れる時、マリからかなりまとまったお金を要求され、支払ったことだ。しかし当時は喜んで払った訳ではないし、何せ金額は彼女の年収だったから「結局金目当てかよ」と悪態を付き、捨て台詞を吐いて別れた。
ジョーは基本、後悔も反省もできない人間だけれど、この時のマリへの言葉は心の底から取り消したい。覆水盆に返らず、It is no use crying over split milk。「水」と「milk」の違いはあるが液体で表現されるところは東西で共通するらしい。
色々と制限のある付き合いであったが、マリの働いていた会社の社長とは友人でもあったから年に一度、研修と称して共同で社員旅行に出かけた。社員旅行だから全くの別行動をする訳にはいかなかったが、例えば最終日の夜とかはマリを自分の部屋にこっそり呼んで(バレていたような気がする)In &Outを楽しんだ。はっきりと覚えているのはニューヨークでの夜だ。市内の摩天楼を眺めながらマリの両手を窓に押し付けて立ちバックを決めた。当時はまだドーピングの必要がなく、我ながら「盛ってたよなあ」と感慨に耽るのだった。
しかし一番のマリとの思い出はタイへの旅行だ。その時ジョーは2ヶ月ほどタイに出張していた。仕事の目処がたった時、マリをタイへ呼んだのだ。ジョーのリクエストに応えてマリは5日間の休暇を取ってバンコクに来てくれた。その心意気が嬉しくてタイでも一、二を争う高級ホテルを予約した。ジュニアスイートで部屋は無駄に広く70㎡を超える。コネクティングルームもあるから気分を変えながらIn &Outを楽しむことができる。マリの叫声がいつもより一オクターブ以上高かった気がする。気がするだけれど。
マリは早朝着のフライトでバンコク入りしていたので、初日はホテルライフを楽しんで貰った。昼食兼用の朝食を取った後、腹ごなしにプールサイドへ。ひと泳ぎした後、マリはエステルームへ直行。このホテルのスパ&エステはバンコク一という評価もあるくらいで、マリも大満足。「お姫様になったみたい」と満面の笑顔で部屋に戻って来たのを思い出す。そして再びエクサイティグタイム(別名In&Out)。あんな場所やこんな場所でフィバー(死語?)した。
夜はホテルを出てバンコクの喧騒を彷徨う。バンコクの魅力の一つはこの喧騒にあるというのがジョーの個人的な意見だ。そしてそんなバンコクの猥雑な時間を一緒に楽しんでくれるマリは本当に貴重な存在だったと今にして思う。
清潔とは言い難いけれど味は間違いない屋台でグラグラした椅子に座り、アイス入りビール(安いけどめちゃくちゃ薄い)を煽りながらタイ人と共にローカルフードを味わう。昼間の高級エステで、しっとりしたマリのお肌は調理の際飛び散る油でギトギトになっていたが、そんなこと気にしている場合ではないとばかりパット・パック・ルアムミットを頬張るマリ。好奇心旺盛でいつもジョーの提案に付き合ってくれたマリ。いい女だったな。
夕食後は大人の社会科見学。ゴーゴーバーに繰り出す。店にもよるが女性同伴OKの店もある。入店した店のステージでは女子だけでなく、面積の狭い股間を強調したブリーフだけで鍛えらた肉体を見せつけるように若い男子も踊っている。指名すれば女子も男子もお持ち帰りができるらしい。客は日本人が一番多いけれど、西洋人も少なくない。何人かジョーのようなカップルもいる。ちょっとだけ見学のつもりが、何人かの西洋人女性がステージに上がり、踊り出し、それがマリの好奇心に火を付けた。マリはやおら舞台に上がり、負けじとばかり腰を捻る。小さい頃からダンスを習っていたからその踊りは素人はだしだ。ステージのタイ人ダンサーたちはしらけ顔だったが、客席からはヤンヤンの喝采。マリのタンクトップにチップを挟む客まで現れる始末。振り返るとここがバンコクでは一番楽しい場所だった。ステージから降りたマリはチップを数えながら「儲かっちゃった!」と言いステージに歓声を送り続けた。
しかしながらこの旅を忘れがたくしたのはバンコクでの思い出ではない。2日ほどバンコクを堪能した後、スコータイに移動した。タイ北部に位置するスコータイはバンコクから1時時間余りのフライト。13世紀に成立したタイ最初の王朝でもある。
バンコクは観光スポットからグルメまで全てが用意されているからツーリストにとっても魅惑的な都市だけれど、ジョーにはちょっとtoo busy 過ぎる。現地の友人に周辺も含めてどこかおすすめがないかと尋ねるとスコータイを勧められた。世界遺産に登録されたスコータイ遺跡がその魅力だという。「って言うか、遺跡の他は何もない場所だけどね」というのもジョーの心を動かした理由の一つだ。旅程を変更し、スコータイ行きのフライトチケットとホテルを予約したのだった。
早朝のフライトでスコータイ空港に到着。小さな空港である。空港からタクシーで遺跡周辺のホテルへと移動する。ホテルに荷物を置いてからレンタサイクルを借りて遺跡群を巡るのがスコータイスタイルだ。
時期は雨季が終わり、乾季が始まったばかり。北部に位置するからこの時期、朝は10度くらいになることもある。しかし昼間は30度を超える日が多いから午前中に行動するのが肝心だ。
早速マリと二人で自転車に乗って遺跡巡り。空港に着いた時は冷んやりしていた空気はまだ午前中なのに既に熱を帯びている。首にタオルを巻き、リュックには十分の水を詰めて出発だ。
歴史公園入り口でチケットを買い、公園内を廻るとスコータイ王朝の遺跡がいくつも現れる。荒廃が進んでいる寺院や仏像も少なくないが、そこがまたいい。仏像は立像、坐像、涅槃像とさまざまだが、目が大きく、優しく微笑んでいるのが印象的だ。日本の仏像のように荘厳さには欠けるが親しみの湧く仏像である。これは後追いの知識なんだけれど、スコータイ朝はクメール王朝(アンコール朝)の支配を打ち破って独立を果たした。だからクメール芸術の影響を色濃く受けているという。そして当時のクメール王朝はヒィンズー経を信奉していたからスコータイの仏像はヒィンズーの神々を彷彿させる。この時点ではアンコールワットに行ったことがなかったからきちんとした比較はできなかったけれど。
意外にもマリはこの場所を楽しんでくれたようだ。好奇心旺盛女子だが、年齢的なこともあって遺跡や仏像に興味があるように思えなかった。しかしジョーよりも旺盛に周辺を散策し、時に仏像の前に佇み、盛んにシャッターを切ったり、その前で物思いに耽ったりしていた。むしろジョーの方が暑さに根をあげて「そろそろホテルに帰ろうか」と言ったが、マリは「先に帰っていてもいいよ」と言いながらさら遺跡巡りを続けるのだった。
旅が終わった後もマリはしばしば「スコータイ、めっちゃ良かった。また行きたいな」とよく言ったものだ。マリのこの言葉はスコータイの旅を特別にし、忘れ難いものにした。ジョーには嬉しい誤算だった。
【宇宙倶楽部女子との旅の取説】
マリとの旅が忘れ難いものになったし、そもそも前述した旅のDNAが組み込まれているから宇宙倶楽部入会した後はちょっと仲良くなると安易に旅に誘い、数々の?失敗を繰り返してきた。最終的にマリにはまあまあの金額を提供させて頂いたので(毟り取られた)実質お手当なしというわけではなかったが、前述したように旅の時も含めて日常的にお手当を払うことはなかったし、そのことを疑問に思ったことはなかった。だから別れる時、マリがお金のことでずっとモヤモヤを抱えていたことを知って驚いた。その時は頭に血が昇っていたから、冷静に考える余裕はなかったけれど、前述したように渋々だったけど、一定の金銭を渡せたのは良かったと思う。
宇宙倶楽部に入会した時、担当の景子姫から言われたことは
・交通費を必ず渡すこと
・お手当については相談の上、お互い納得すること
の2点だ。
お易い御用だと思った。でも恥ずかしながら旅に出る時別にお手当を払うという発想がジョーにはなかった。言い訳にはならないけれど、マリの時もそうだったし旅に連れて行くこと自体がお手当の代わりになると思っていたから。ごめんなさい、不特定少数の女子の皆さん。今は深く反省し、宇宙倶楽部女子を旅に誘ったり、誘われたりした時はまず、お手当の話からしております。少しだけ学習しているんですよ、これでも。
【サワコのこと】
サワコは瞬間的にユニバースに在籍し、数人のトウサマを虜にされあと、数週間で倶楽部を卒業された。サワコにとってジョーが最後にオファーした男性会員で、有難いことにその末席に連なることができたのだ。ギリギリセーフ。
サワコはジョー好みの大柄でスタイルのよい美人だ。肉感的というより見方によっては少し太めに見えるが、服を脱ぐと出るところは大きく出ながら、同時に鍛え引き締まった魅惑的な肉体が現れる。その肉体は過去のどの女性よりもmouth watering でジョーがプレゼントしたフランス製下着がよく似合った。
サワコは勤人で忙しい日々を送っていたし、さらに輪をかけて複数のオトウサマがいらっしゃったからそれほど頻繁に会えたわけではない。せいぜい月一くらいの逢瀬だった。でもジョーにはこれ位のペースが丁度良かった、色んな意味で。
サワコはお酒も強く、好奇心旺盛でいつも話が弾んだ。特筆すべきは言葉の選択肢で、語学が堪能だからだろうか語彙が豊富で頭の回転も早く、彼女との会話を堪能した。ライバル?は多かったけれど、ゆっくりとしたペースで関係性を深めていけばいいと思っていた。サワコの方もジョーを気に入ってくれていたようだった。
と思っていた矢先、サワコがバンコク勤務となった。バンコクは東京からなら5時間程度のフライトだからもの凄く距離があるわけではない。でも他に用事もないのにバンコクまで行くのは暇人のジョーも流石にためらわれる。そういうジョーのためらいを知ってか知らずか、サワコから「バンコクに遊びに来ない?」というLINEが入る。おそらくオトウサマ方全員への一斉LINEだろう。エサを撒いて一人でも引っ掛かれば位の気持ちだったのだろう。
ライバル心?の薄いジョーであるがすぐエサに食いつくのはちょっと悔しい。そこでこちらから逆オファーをすることにした。
「ホーチミンに出張になったんだけど、週末にでもこちらに遊びに来ない?バンコクからなら1時間ちょっとのフライトだし」
ダメもとでの送信だったけれど、返信はYes。条件(お手当)を明記したことも功を奏したのだろう(特別高額でもないんですけど)。と言う訳でホーチミン、アンコールワット3発イヤ、3泊4日の旅が実現したのである。
つづく。