しりとりで綴る交際倶楽部奮闘記3ラオス後編
くらくら→ラオス
翌朝は5時起床。
昨夜は食事の後、ゴングが鳴ったので、ファイトしてしまったから、まだ眠い。
でも托鉢は旅の最大の目的だからサボる訳にはいかない。
眠気覚ましにさっとシャワーを浴び、フロントへ。
既にホテルスタッフが準備をして待っていた。
托鉢用の炊きたてのご飯が入ったお櫃を手渡され、ホテル前の通りに移動する。
スタッフが歩道に置いたクッションに座り、僧侶がやって来るのを待つのだ。
夜は明け、空は快晴。
今日も暑くなりそうだが、この時間はまだそれほど暑さを感じない。
ややあって両方向から僧侶の集団がやって来るのが見える。
全員オレンジ色の袈裟を身につけている。
ルアンパルバーン市内に点在するお寺ごとに集団でやって来る。
お寺ごとにコースが決まっているようで、ここには4つのお寺の僧侶たちが通過する。
まず右側から僧侶たちがやって来る。
先頭には長老で全員が托鉢用の大きなボール?を肩から提げている。
若い僧侶が多く、一番下はおそらく6歳くらいなのではないだろうか。
肩から提げているボールの方が大きいくらいだ。
僧侶たちがジョーの前を通過していく。
ホテルが用意してくれた炊きたてのご飯を少しずつ手で取り、僧侶たちが差し出すボールの中にご飯を入れる。
ご飯が中心だがお菓子やビニール袋に入った野菜類も混じっている。
僧侶に話し掛けるのはご法度で無言である。
僧侶の方も何も言わずボールを差し出す。
僧侶を見下ろすのが一番マナー違反だから、座ったままで見上げるように托鉢をする。
次々と僧侶がやって来るから素早くお米を取らなければならないが炊きたてなので熱くてうまく掴めない。
お顔を拝見する余裕はあまりなかったが幼い子供の僧侶も混じっている。
最初の僧侶集団が終わると左から別の僧侶たちがやってくる。
少し要領を得たので今度は少しだけ余裕ができた。
全僧侶に托鉢が行き渡ると、僧侶たちが声を合わせてお経を唱え始める。
ジョーもナナ姫も手を合わせて首を垂れる。
前の僧侶たちはお経を唱えなかったので、同じ托鉢でもお寺によって作法が違うのかもしれない。
もちろん、こちらの方が遥かに有り難味を感じることができる。
そして熱さにも慣れ要領も分かってきた頃にホテルスタッフから
「今日の托鉢は終了です」
と告げられた。
立ち上がるとグラスに入った水が手渡され
「この水を庭のどの木でも良いですから撒いて祈ってください。ここまでが托鉢になります」
と言われた。
そこでナナ姫と一緒に庭の中央にある大木に水を撒いて手を合わせて祈った。
何となくだけど、少し高尚な気持ちになった。
しかし時間にしたら僅かな時間だったし、次々と僧侶がやって来るので、作業のように素早く托鉢せねばならず、正直ハルキさんが感じたような気持ちにはなれなかった。
一旦部屋に帰ろうとした時、ホテルスタッフに呼び止められ、僧侶たちは托鉢を受けた後は寺に戻るが、知り合いのいるお寺に行ってみないかと誘われた。
ナナ姫に目配せするとokサインだったので、連れていって貰うことにした。
移動はホテルのトゥクトゥクで。
移動中運転手でもあるホテルスタッフが
「I was a monk」
と告げる。
ナナ姫が
「How long?」
と尋ねると彼は
「from 7 years old for 20 years.」
と答える。
それから質疑応答が始まり、ラオスの僧侶時事情や教育事情も見えてきた。
彼によれば、ラオスの義務教育は小学校5年生までである。
しかも約2割くらいが卒業出来ないらしい。
主な理由は貧困。
勉強を続けるために僧侶になる人が多い。
彼もその一人だ。
僧侶になれば全てが無料。
義務教育ではない中学への進学も可能だ。
僧侶だけの英語学校もあり、希望すればプライベートクラスでマンツーマン指導も可能だ。
彼はそこで英語を身につけた。
ナナ姫によれば「発音が綺麗な分かりやすい英語」だという。
おそらく成績が良かったのだろう、彼は僧侶のまま大学に進学し、タイにも留学した。
話を聞く限り、エリートコースを進んでいたようだ。
どういう理由でホテルマンになったかは不明であるが、ラオスでは僧侶からビジネスの世界に身を投じたり、新しいことを始めるのは珍しいことではない。
その逆もあり、短期間の出家も許されている。
つまり広い意味での学校の機能もお寺は担っているのだ。
目的のお寺に到着した。
ホテルスタッフの案内で本堂に向かう。
すると一人の僧侶が座り、本尊に向かって静かな声でお経を唱えている。
ジョーもナナ姫も本堂の入り口付近に正座をして黙って僧侶の唱えるお経に聞き入る。
声は小さいし、たとえ聞こえたとしてももちろん何を言っているかは分からない。
それでもご本尊の前にいると厳粛な気持ちになる。
ふと横を見ると本堂横に食堂があり、僧侶たちが朝食の準備をしているのが見える。
前でお経を唱えている僧侶は朝食前のお勤めをしているのだろう。
お経は20分は続いたと思う。
でも苦痛でなかった。
最後は手を合わせて本堂を出る僧侶を見送った。
トゥクトゥクでホテルへる途中、朝市を冷やかした。
ホテルに着くと、着替えるために一旦部屋に帰る。
随分と時間が経ったように思ったがまだ8時前だ。
朝早く起きると朝が長く感じるからジョーは早起きが好きだ。
そして当然のように精進落としだ。
折角少しは心が洗われたように感じたのにまた逆戻り。
しかし二人でシャワーを浴び、熱いキスを交わし、姫がジョー自身を口で咥えるのだからとても冷静ではいられない。
シャワーのお湯は止めずにジョーは背中にお湯の流れを感じながらいつものように?立ちバック。
姫の
「ナナの中にいっぱい頂戴!」
という掛け声で(?)ジョーが果てるのもいつも通りだ。
それにしてもセックスが弱いはずのジョーだが、ナナ姫やダイナマイト嬢の前では絶倫になってしまうのはどうしてだろう。
確かにドーピングはしているけれど、これが体の相性というものかもしれない。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
その日は郊外の美しい渓谷へと行って滝の流れの中で泳いだ。
帰りがけに象キャンプに立ち寄り、二人で象に乗る。
タイと同様ラオスにもたくさんの象キャンプがある。
しかもラオスでは象使いの免許が取れるという。
国際ライセンスではないが、これを持っていると日本の象にも乗れる可能性があるらしい。
ホテルに帰ってからはメコン川に移動し、サンセットクルーズ。
ホテル所有の快適な船に乗ってメコン川に徐々に沈んでいく夕日を楽しんだ。
その後はナイトマーケットへ。
様々な商品があるが、定価はあってないようなもの。
店主との値段の駆け引きが楽しい。
あれこれと買い入れたが、1万円分を使うのには割と時間がかかる。
物価の安さも(日本人にとってだけれど)ラオスの魅力だ。
翌朝も托鉢をしてその後は夕方のフライトまであんなことやこんなことをして過ごす。
そして夕方前に飛行場に移動。
ナナ姫はハノイに引き返すという。
姫のフライトはジョーのバンコク行きよりも20分早く出る。
出発前にハグ。
「ラオスには特に何もなかったけど、楽しかったね。またジョーちゃんと旅行に行きたい」
とナナ姫。
もちろん、ジョーにも異論はないが、姫と過ごすには全力投球が必要だからジョーの体力が持つか自信がない。
姫の搭乗時刻となった。
バスもあるのになぜか飛行場を横切り、歩いて移動する。
姫が何度も振り返り、ジョーに手を振るのをジョーはロビーから見つめていた。
これからナナ姫とはどんな付き合いになるのだろう。
ひとり物思いに耽るジョーであった。