人生を楽しむ 〜性の喜び オヤジは辛いよ〜
「性を楽しむ」というサブタイトルの割に、苦労話を羅列しているのは、それだけオヤジが性を楽しむ事が容易でない事を意味している。
列挙している様々な出来事を一挙に解決する万能ツールが「金」であることは今更言うまでもない。
6 茶飯女
「叶えたい夢があります、そのために長期的に応援してくれる大人な男性を探しています」
まさにパトロン募集広告である。
中世ならいざ知らず、このような見返りが期待できない長期出資を進んで行う篤志家が果たして存在するのだろうか?
この手のプロフィールを目にする度に疑問を持った。
上記の文言に加えて「大人の関係は望んでいません」などと付記されていようものならもう噴飯ものである。
「親に言えよ・・・」と思わず口にしてしまう。
思えば「Sugar Daddy」にはこの手のプロフィールが、それこそテンプレートか?
と思うほどに多い。
敷居が低い分、茶飯女の参入も容易だということだろう。
交際クラブでタイプAを求める御仁にはお勧めだが、世の大半の男性にとってはそんな虫のいい話に突っ込む諭吉はないと私は思っている。
いくら金が余っているとはいえ、道端に諭吉をばらまく人はいない。
金は何がしかのリターンが期待できる場合のカードとして使うのが本筋であると私は思うのだ。
一度だけ「Sugar Daddy」内の掲示板に「食事のお誘い」を出した事がある。
「○日○時 新宿にてイタリアン お車代確約」おおよそこんな内容だったと思う。
「おっさんはいつもイタリアンを提案するなぁ」と言わないでほしい、鯉釣りに練り餌を使うのが常道であるのと同じ程度の議論である、釣果が良いので定着しているのだ。
さて掲示直後からメッセージが来るわ来るわ、それこそ返信が追いつかないほどに来た。
その中から慎重に茶飯女を排除して、最終的に残ったのが「芸能関係:Rさん」であった。
なんでも元レースクイーンで、現在も細々と芸能活動を続けているとのこと、写真の雰囲気もよかったし、なにより元レースクイーンで芸能活動中ということであれば、容姿に失望することはあるまいと判断し、Rさんと会うことに決めた。
掲示板はその直前で削除し、既にメッセージをいただいていた補欠の方々には丁重にお断りを入れた。
7 元レースクイーン
当日、予約した店の前で待ち合わせとしたが、早く到着したRさんは既に入店していた。
遅れて到着した私は店員に席へと案内されることとなり、そこでRさんとご対面となった。
確かに美人だった、そして元レースクイーンというのも本当で、こちらが出すサーキット名には全て正しく回答してきた。
服の上からだが、たしかにスタイルも良さそうだ。
これは当たりを引いたと私は確信した、髪型を褒め、服のセンスを褒め、努めて紳士を演出して会話を楽しんだ。
関係性を継続して次回は是非大人な関係を・・・という思いを胸に秘めて、終始紳士然として振る舞いきった私は、帰り際に手土産まで買ってあげてその日は帰したのだった。
翌日私は交換したLINEで探りのメッセージを入れてみた、昨日のお礼+次回の打診である。
とりとめもない会話が数回続き、次回は大人でというところまでの合意形成には成功した。
問題はその金額である。
彼女はなんと7を提案してきた。
「7?妥当じゃないか?」と思った方もいるかと思う。
しかし彼女は29歳である。
正直想定よりずっと高価な提案だった。
彼女曰く、
「以前お付き合いしていた方とは7でした、難しければ5で・・」
高い、高いのだ。
少なくとも高く感じてしまう。
正直風俗と比較してしまう。
風俗ならば5~7で上等レベルの女性を時間限定ではあるが所有できる。
しかし彼女との場合、食事代、ホテル代を含めると総額で10を軽く超えてくる。
これはもう無しである、言いたくはないが不相応に高額である。
商材が商材だけに正札は存在しないので、Rさんを責めることはできないが、相場観が一致しない以上無しである。
かくして私は彼女にお断りのメッセージを発信する必要性に迫られたのであるが、ニュアンスが難しい。
困った私は苦肉の策として英語でお断りのメッセージを送った。
予想通り彼女は不快感を表し、関係はそこで終わった。
5でお試ししてみるべきだったのかどうか?今でもわからない。
8 茶飯女以下の場合 ~ほろ苦いデビュー戦の思い出~
既に記憶のかなたに消え去ろうとしているが、私のデビュー戦を思い出してみよう。
御多分に漏れず、写真で決めたNさんに恐る恐るメッセージを送り、お食事の約束を取り付けた、当時は本当に会えるのか半信半疑だったので「取り付けた」というのが偽らざる心情であった。
新宿駅で待ち合わせに現れたのは写真と全く変わらない美人で小柄な女性だった。
勇んで高層ビルの最上階レストランにお連れしたビギナーの私だったが、食事開始当初から違和感に満ちていた。
まずNさんは私と目を合わさない、まるで目を合わせると穢れるとでも思っているようであった。
そしてNさんはスマホをいじり始めた、それだけでもマナー違反であるが、あろうことかNさんはLineの向こうのオヤジの悪口を私にぶちまけてきたのだ。
今思えば、そのオヤジもオヤジであるが、「なにこいつ キモイ」などと聞かされる私は一体どういうリアクションを取ればよいのか?
Nさんは確かに美人だったが、相当性格が悪いと痛感した。
あるいは日頃のストレスがたまっていて、私にはそれをぶちまけても許されると侮ったのであろうか?
またNさんは飲食店で働いており、お店のスタッフを試すようなことをした。
食後の紅茶が運ばれて来た時のこと、彼女はおもむろに「ミルクもらえます?」とスタッフに伝えた。
しばらくして運ばれて来たミルクだが、グラスに入っていた。
それを彼女は冷ややかな皮肉に満ちた目つきで眺め
「普通、紅茶にミルクっていったら、小さいカップにいれるっしょ?」
と吐き捨てた。
なるほどもっともではある。少し気遣いのできるスタッフならそうしたのかもしれない。
しかしその店のスタッフはそれができなかった。
同じ飲食業界に努める者として、それを揶揄したのだ。
まぁ心情的に分からなくはない、しかしそれを共有する私は一体どういうリアクションを取ればよいのか?
Nさんにとって、他者が自分より劣っていることが何よりの自己肯定なのかもしれない。
俗にいうマウンティング行為というやつだろうか?
しかしそんな行為を目の前で見せられて気持ちのいい人はいるまい。
大多数の日本人と同様、私はその場は卒なくこなしたが、後から思い出して怒りが沸々と沸いてきた。
後に経験を重ねて思ったのは「あれは、茶飯女以下だった」ということであった。