実録「いいパパ」の罠──中編
[前回のあらすじ]
すでに3人ほど定期で会っている女性がいるため、「これ以上増やすのは厳しい」と思いながらも、つい新しいプロフィールに手を伸ばして、パラパラと写真を眺めていた僕。
すると、「パパ活」にはそぐわない、素朴な「パン屋の店員さん」のような22歳の女性が目に留まった。妙に気になり、男の性でついアポイントを取ってしまうのだが、会ってみると、彼女は、女性というより「少女」のような人だった。
はじめは「一緒に歩くのが恥ずかしい」と思うのだが──。
Contents
■まるで友達のような関係に
彼女が気になり始めた僕は、翌週も約束してしまった。
彼女との会話はとても楽しかったし、あまりにも素朴なので、とても新鮮だった。
もっと彼女の内面が知りたいとも思ったし、その「何も知らない危うさ」が心配でもあった。
彼女は、からあげが大好きとのことだったので、調べてみたが、からあげ専門店だと、安すぎる店しかない。中目黒の人気の店を選んだが、せいぜい1人2,000円くらいである。
「いくらなんでも」と思ったが、彼女は全く気にしなかった。
「おいしければいいんですよ♪ からあげ大好き」
チープな狭いテーブルで向かい合って、いろいろ話した。
今日は、前回よりもさらに親しげになっていて、基本的にタメ口で話すようになった。
2回目とは思えないほど、仲良しになった。
一番知りたかったのは、パパ活なんか絶対にしそうもないのに、なぜやり始めたかということだったが、納得できる答えは得られなかった。
「友達に教えてもらって」「コロナでずっとリモートワークだったのでストレスが溜まってたから」くらいの答えである。分かったのは、あまり深く考えるタイプではないらしい──。
続いて、男性関係のことも聞いてみた。彼氏は2年ほどいないらしい。これまで付き合ったのは3人で、しかもちゃんと付き合ったのは1人だと言う。
嘘には思えなかった。うーん、謎が深まるばかり。この世代の感覚が分からない。
店を出ると、「甘い物食べたいね」という話になり、少し散歩しながら探したけれど、コロナ禍で、どの店も閉まっていた。
「じゃあ、さっき通ったタピオカ飲もうよ。タピオカ大好き♪」
すっかりタメ口が板に着き、僕はいつのまにか、幼く見える彼女と一緒にいるのが恥ずかしいという気持ちがなくなっていた。
■急に態度がかたくなった彼女
3回目はそこから1週間空いた、翌々週になった。
「サーモンが好き」と言うので、恵比寿の人気の和食バルを選んだ。
恵比寿駅のみどりの窓口の前に少し遅れてきた彼女と目があった。
最初はニコッとしたのだが、すぐ少し表情がかたくなり、急に敬語になった。
「ごめんなさい。待ちました?」
前回はあんなにタメ口だったのに、どうしたんだろう。距離が急に開いた感じになった。
「あ、大丈夫ですよ。仕事、忙しかったんですね」
僕も釣られて、最初に戻った。いや、最初よりもかたくなった。
「課会が延びてしまって。突然、議題が増えたんで遅れちゃいました。ごめんなさい」
店に行くまでの道すがら、話をしても、やはりかたい。
どうしたんだろう──。
話が少し途切れがちのなかでいろいろ考えてみた。
そのなかで自分では一番正解かもと思える理由は、「前回すごく仲良くなったけど、改めて今日会ってみると、自分の頭の中のイメージよりもおじさんだったので少し引いた」だった。
違うかもしれないが、そんなところとしておこう。
前回、友達みたいになっていたので、少し悲しかった。
■3杯目の決心
ただ、今までより少し距離が開いたというだけで、彼女は相変わらず、素朴でかわいかった。
「すごーい、こんな店、はじめてです。普段、ファミレスばかり行ってます」
「これ、すごく美味しい。こんな料理あるんだー」
「ハンバーグ大好きなんです。まだまだ全然、食べれますよ♪」
かわいいと思いつつ、僕はいろいろ考えた。
やはり僕も男である。このまま、ずっとご飯だけというのも、つまらない。
もちろん、毎回、お手当として多少のお小遣いは発生している。
しかし、彼女は幼すぎるし、男性経験もすごく少ない様子だし、それ以上の関係を望むのも、心がはばかられる。
前回みたいに、友達みたいに仲良くなれば、それも楽しいかもしれないが、今日のような感じだったら、他にも会っている女性が多くいるなかで、今後も定期的に会うかどうか考えたほうがいいかもしれない。
でも、その前に──。
3杯目に進んでいた僕は、決心した。
これまでの疑問を全部、聞き出そうと──。
(「後編」に続く)