地下アイドルというお仕事
約10年前の事です。
独身になって掃除が面倒になった私は、検索して「メイド出張サービス」というのに電話してみた。ハチワンダイバーという漫画原作のドラマで、仲里依紗が演じた出張メイドを覚えていたのもある。
数日後、メイド服を着た美人がモップと卵とケチャップとチェキを持って送迎されてきて、掃除してオムライスを作ってくれた。猫がいるので、猫アレルギーじゃないメイドさんと指定したら、たいそう猫好きらしくうちの猫と仲良く遊んでいてかわいかった。お代金2時間¥15,000+交通費
しかしこの店はなんと1ヵ月後に潰れてしまう。電話してもつながらない。
そのしばらくのち、メイドリフレというお店があり、かわいい女子とお話ししながらマッサージを受けられるので私はたまに行っていました。
キレカワ美人の施術が始まり、機嫌良くお話しを始めたメイドの第一声。
「どこかで会った事ありませんか?行きましたよね、家。猫。」
そうです。たまたま行った店のたまたま当たったメイドさんが、潰れた出張メイドの人だったのです。
「あの店潰れちゃって、よく似た店無いですよね。困っているんですよ。」
「私行きますよ。個人的に。」
「本当?それは助かる。店の時と同じ値段でいいですか?」
連絡先をこっそり渡し、以降彼女は月1ぐらい、10回以上来てもらう事となります。
5回目ぐらいの時だろうか。掃除と料理とメイドリフレをやって貰っていたのですが、2時間ではなかなか手が回らない。
「友達のメイドも連れて来ていいですか?」
というので、OKして2人に2時間お願いする事にする。
そして、連れて来た彼女より2つ下の21歳、小柄な美少女が今日の主役Eちゃんです。
それから、6回目7回目8回目と、3人でタコヤキパーティしたり、月の楽しみになっていました。そんなある日、猫好きメイドさんが2階の掃除している時、1階のEちゃんは私に言った。
「お金貸してもらえませんか?バイトだけではどうしても暮らせなくて。」
めちゃくちゃかわいいな、と思っていながら紳士的に対応していた私は、ここぞとばかりにチャンスだと言いましたよ。
「お金貸すのもありだけど、それなら愛人やりませんか?私の。」
まだ、パパ活という言葉を、ユニバース倶楽部が広める前の時代です。Eちゃんは、2つ返事で乗ってきました。
きっかけは東京に用事があって交通費が無かったみたいなので、東京旅行を兼ねて20万円ほど渡し、空いた日は1日一緒に東京観光して帰ってきました。思いのほか楽しんで貰えたみたいで、彼女とはほどなくデートや旅行を繰り返す仲になりました。
普段は相場ぐらいのお手当でしたが、一度だけ歯の治療などで130万円あげた事はあります。
いかにも黒髪処女っぽいルックスのEちゃんだが、実は男性経験も早く彼氏が絶えない。冷静に考えればもてるよね。DV気味の彼氏にアザを作られている時があり、猫メイドさんに早く別れろと注意されていた。殴られるぐらい愛されてるのがいいって、よく分からない神経だな。精神的に病みやすくて、一度旅先で病院に連れて行った事がある。
また、旅先でカラオケに行った事あるんですけど、目の前で私だけに歌ってくれた歌で涙が出るほど感動した事がある。上手いかわいい切ない。
1年ぐらいたってEちゃんは、スカウトされてアイドルの事務所に入ると言ってきた。
芸能人と言っても、実際はレッスン代でお金を取られるだけで、たまにショッピングセンターで歌う賃金はすずめの涙で暮らせるお金ではない。一番実入りがいいのは、地下ライブ会場で歌いヲタクさんに1,000円のチェキを買ってもらうのが一番だという。
Eちゃんは、すぐに事務所をやめてフリーの地下アイドルになった。そうやって、地下のライブ会場で歌って、月給10万円ぐらいでフリーターと掛け持ちしている地下アイドルという職業があるのである。
ユニバース倶楽部の男性会員なら、地下アイドルと検索すればいくらか出てくる事でしょう。ぜひオファーして支えてあげて欲しい。
私も地下アイドル会場に何回も行って、ファンにまぎれてチェキも買った。歌っているのを見るとき、この女子が先週一緒に旅行してたEちゃんであるのは、ちょっといやかなり鼻が高いのである。浜崎あゆみと付き合ってた、エイベックス会長M氏の気分はきっとこうに違いない。華原朋美と小室哲哉もきっとそう。
声優になりたいと言っていたが、今だから分かるけど声優は目指してはいけない職業である。
Fランク大学や専門学校に声優コースがたくさんあったり、声優志望って何千人以上と居ます。そして、声優で食べていけるパイは国内300人しかありません。それなら、東大や国会議員目指したほうが簡単です。プロ野球選手になるレベルの競争があり、その300人になれてやっと年収数百万円。億超えなんて誰も居ません。
ある日彼女は声優オーディションがあるので、応援して欲しいという。公開のオーディションで、3,000人ぐらいの志望者の中で優勝するとアニメの主役ができる。
彼女は一次の書類審査を通過し、200人ぐらいの次の審査に進めた。それぞれのSNSの配信でアピールするのは今の大学ミスコンと同じ。さらに投げ銭のランキングを競うのである。
投げ銭が多い順から40人と、残り10人は審査員特別賞。50人で最終審査に進める。ツイキャス、ショールームなどの配信は、投げ銭の半分以上配信者の収入になる。あまり有名でない配信者だと、すぐに認知してもらえるのでなかなか楽しいものなのだ。これは職業として成り立つ。しかし、このオーディションの投げ銭は、1円も配信者のものにならない。なかなかいい商売である。
「40位にどうしても入りたいので、最終日に投げ銭してもらえませんか?何でもするから。」
何でもするからと、Eちゃんに言われた。目隠し縛りならもうやったしなあ。途中経過を見てみると、最後の数分で決まるのだろうけど数十万円投げないと順位を変えられない気がする。はっきりした返事をせず、最終日の配信を見ていた。
冷静に見て、彼女の実力では50人に入れてもひいき目に見ても1位は無理と思う。ライバルはセミプロのアイドルみたいな20歳ぐらいの候補者ばかり。2位でもだめなんです、何も残らない。残り数分になって今はぎりぎり圏内だけど、このままなら圏外に落ちる気もする。10万円ぐらい投げれば義理を果たせるかとも思ったが、どう考えても彼女の収入にならないし無駄ガネとしか思えなかった。
結局、残り数分で1万円投げて、結果を待った。彼女は最後の1分でベストスリーまで順位を上げていた。ほかの誰かが1人で500万円投げていた。
結果的に彼女は最終審査で落ち、そのファンの500万円も私の1万円もオーディション会社のものとなった。このころ私はユニバース倶楽部に入った事もあり、新しい女性に夢中になっていて、オーディションはEちゃんと疎遠になるきっかけとなった。
Eちゃんは、その500万円さんに何でもしたんだろうか。彼が私のあとを引き継いでくれたのかな。
それからもう5年がたった。
先に会った、猫好きメイドさんは、結婚して子どもも居て、ユーチューブ配信で月2万円稼いでいたりする。アラサーになっても、なかなかの美貌である。
出張家政婦のお仕事は、彼女の出産を機に、ほかで仲良くなった今のかわいい家政婦さんに交代して以降9年お願いしている。
地下アイドルEちゃんは、検索するとなんとまだ現役で頑張っていた。数年歳をごまかしていたけど、思ったより老けていなかった。小さいながらも、声優の仕事を受けているようだ。彼女の仕事を信じていなかった私は、ちょっと見くびっていたのかもしれないな。失礼しました。
30歳を超えても歌っている地下アイドルは多い。少し検索すれば出てくるけど、42歳の地下アイドルは最年長としてテレビに出ていた。
大阪に元地下アイドルの有名な人が居て、今はコンセプトカフェを開業して社長をしている。36歳だと思うけど、今でもめちゃくちゃ美人である。
お金の面では、地下じゃなくて地上のアイドル、例えば5,000人に1人のオーディションで選ばれてる乃木坂46でもアンダーメンバーは月給20万円である。承認欲求だけの世界。好きじゃないとやってはいけない仕事。
白石麻衣や西野七瀬みたいに、年収億に行くのはそれこそ宇宙飛行士目指すみたいな確率だ。
ユニバース倶楽部のプロフィールを見ていて、アイドル・モデル・コンセプトカフェなんていう文字を見たとき、ちょっとEちゃんの事を思い出します。みんな頑張れ。結婚なんてしたって、ろくな事無いからね。