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私の既婚理由
父の余命宣告を受け10ヶ月が過ぎた頃、ほんの少しでも何か親孝行にならないかと、当時お付き合いをしていた彼と結婚し披露宴をしました。
「せめて花嫁姿だけでも…」
超多忙極める
家業手伝い、本業の仕事、父の見舞い、アルバイト、加えて披露宴の準備が始まりました。
そして「断れない仕事の延長」としてお付き合いしていた方たちへも表の顔を通して結婚の報告をし、招待状を関係者へ持参してまわりました。
当時は仕事への影響を考えることよりも、これから「父の死を受け入れなければならない」ことの方が何よりも不安で辛くて苦しかったのです。
「必死に働いたし、無我夢中だった。」
借金
銀行へ数百万円のお金を借りにいきました。
「とにかくなんでもいいから早く!」と神にすがるのにも似たような気持ちで披露宴の費用を捻出しましたし、必死で準備しました。
融資交渉から親族挨拶、披露宴会場との打ち合わせを含めて、約3ヶ月でひと通りの慣習をやりきりました。
仕事で周囲をとりまとめるという業務が自分の生活に役立ったと初めて実感していましたが、披露宴で見た父の背中は痩せ細っていて、見るのも苦しくて涙をこらえるのに必死でした。
「ごめんね…辛い体調をおして準備を手伝ってくれたんだね。お父さんしんどかったよね。」
「結婚したけど、やっぱり悲しかった」
「疲れた…」
親孝行という体裁のわがまま
せめて花嫁姿だけでも父に見せたかったという理由での結婚ですが、唐突に巻き込まれた周囲は迷惑だったと思います。
結局父は2年弱で亡くなり、親孝行というものは何ひとつできませんでした。
辞令
披露宴が終わったのち、結婚を理由に会社から異動辞令が出ました。
「結婚したら女性は戦力外なの?」
※会社側の権利の乱用?
気に入らない社員または結婚や出産、介護などをはじめる社員に対して、総務や人事担当者、従事している部署問わず短絡的に傷つける発言、閑職や慣れない仕事に異動させることによって自主退職に追い込むなどの嫌がらせ行為が様々な企業で行われています。
明らかな場合はその不当性を訴えて無効にできるケースがあるようですが、その不当性を立証できる事実を集めなければならず、また認められても「訴えた事実」により働きにくくなることが想定される為、難しいことのほうが多いようです。
日常会話
「ねえ、あなた。こないだねー、取引先の重役さんとお話ししてたんだけどね、ご結婚されたお子さんたちが遠方に住まれていてなかなか会えなくて寂しいらしいのよ。時々ランチに付き合って欲しいって言われたのだけど、なんかめんどくさいわよねー。」
「そう?それは可哀想じゃない。寂しいんだろう?ランチくらい付き合ってあげたらいいんじゃないかな。」
「…そうねぇ、断ったら可哀想かな。」
「仕方ないわよね。一度くらいはお付き合いしとかなくちゃ。」
「親孝行ができなかった父のかわりに、償いがてらとでも思っておこうかな。」
「しかし、なんてフランクな夫。私の心配はしてくれないのね。苦笑。」
重役とのランチ
しばらくして、取引先重役からのお誘いで自分ではまず行くこともない限られた方々の為の施設に案内されました。
今日はそちらに併設されているカジュアルレストランで、2人席での会食でした。
たどたどしく重役との不慣れなビジネス会話をしながら、ランチを済ませたところにコーヒーが出てきました。
先ほど重役がトイレに立たれた際に、コーヒーを注文してくださっていました。
重役の多くの方々はさりげなく気遣うこのようなことがとてもお上手で、なかなかそうはなれないと、たびたび尊敬をしていました。
お礼の品
「ランチのお付き合いをありがとう。これはほんの気持ちだよ。」
手渡されのは、品のよい小さなリボンがかけられたハイブランドの紙袋でした。
お堅い大組織の職場でのイメージからは全く想像がつかなくて、本当にとても驚きました。
「私が頂いてもよろしいのですか?ありがとうございます。開けて見てよろしいですか?」
「もちろんだよ。いくつあっても邪魔にならないと思ってね。」
「えーっ、素敵ですねーっ!」
「まあっ、素敵なプチギフト!こんなにセンスの良いお礼は、誰からも頂いたことがないわ。」
へんな錯覚でしたがいつの間にかひととき、恋人と初デートをしていたような少し緊張感のある心地のよい甘い気分になっていました。
社交辞令の約束
「今度は夜お食事に行こうね。」
「はい、承知しました。今日はこんなにして頂いてすみません。」
「いいんだよ。何かいるものがあったら教えてね。」
「いえいえ、とんでもないことです。今日は本当にご馳走さまでした。」
父ほどの年齢の方と2人きりでの食事でしたので、周りの目も少し気にしながら、簡単にご挨拶をすませて、そそくさと急いでお別れをしました。
「ちょっと、困っちゃったわ」
職場に戻るため頂いた紙袋をバッグに押し込みながら、スマートな会食を設けて頂けたことと恋人とのデートのような感覚になってしまったことが少し気恥ずかしく、歩きながらひとり照れてしまいました。
「今日の会食は、いったい何?」
こうして私は ”パパ” と出会うことになりました。
援助交際、パパ活とは何か
パパ活とは何か
「このカジュアルな言葉 ”パパ活” は誰が考えたのかしら。」
※参考 ウィキペディアより
パパ活とは、 基本的にキャバクラでは人間関係などで働けない・働きたくないがお金を稼ぎたい若い女性が、キャバクラの同伴のように食事やお茶を共にするなど自らの若い時間を提供する対価として、自らに金銭を与えてくれるなど経済的に援助する裕福な男性を探して行われている活動。
行為や行う女性の英名はsugarbaby。
男性とのデートの見返りに金銭的な援助を受ける行為・形態は交際クラブ・デートクラブと呼ばれていたが、交際クラブ日本最大手のユニバース倶楽部が交際クラブの形態の認知普及・言葉のイメージ転換をコンセプトによってつくられた言葉である。
言葉の意味として、援助交際とは男性層の金銭的余裕の差や活動自体に肉体関係必須ではない点が異なる。
同伴代で稼ぐことがパパ活の一般的だが、同伴代と別途の金額の大きさ次第で売春に応じる女性もいる。(ウィキペディアより)
援助交際とは何か
援助交際(えんじょこうさい)は、女性が金銭等を目的として交際相手を募集し、性行為などを行う売春の一形態。
高校生や中学生など18歳未満の女性が行っている場合もあり、しばしば児童買春の問題として取り上げられる。
女性に対する金銭的援助を目的とした男女交際を建前としているが、実際には売春の別称であることが多い。
略称は援交(えんこう)、援助、隠語は同音漢字の「円光」や「ウリ(売り)」、「¥」など。(ウィキペディアより)
本音と建前 時代で変わる交際用語
「愛人?パパ活?援助交際?不倫?浮気?何が許されて何がだめなのか。いまださっぱり分からないわ」
一夫一婦制
現代のような一夫一婦制が確立されたのは、明治31年のこと。
※参考 ウィキペディアより
生物学的意義
略
こうした繁殖システムをとる動物では、雄がどれだけ雌に投資する資源を獲得できるかに関する遺伝子に淘汰がかかることが多い。
投資する資源を十分獲得できない雄が雌とともに形成したペアは繁殖に失敗することが多く、後世に残せる自分の遺伝子を持つ子孫の数が少なくなる。
また、雌の側ではより十分な資源を確保できている雄をめぐっての闘争が行われることもある。
哺乳類において、一夫一婦型の性行動を取る種は、全体の3 – 5パーセントとされる(中野信子 『不倫』 文春新書 2018年 p.32)。
ヒトの社会の場合
ヒトの社会は基本的に男性が女性とその子供に対して社会的、経済的な保護を投資として与える構造を持っているので一夫一婦制的な繁殖システムを持つ傾向にあるが、歴史的にみると一夫多妻制が普通であった時代や地域も多いし、一妻多夫制、多夫多妻制の社会すらも知られている。
一夫多妻制が成り立つひとつの要因は、ヒトの社会の複雑な構造によって社会的地位や経済的地位の差が生まれ、個々の男性に集積される資源の量に大きな幅が生まれることが挙げられる。
その為、多量の資源を集積した男性には複数の女性とその子供への投資が可能になり、一夫多妻制が実現されるようになるのである。
略
世界に238ある社会の内、一夫一婦婚のみが許されている社会は43という報告がアメリカの人類学者G・P・マードックの『社会構造』(1949年刊)に記述されている(後述書 p.29)。
カナダウォータールー大学クリス・バウフ(応用数理学専攻)らの研究チームが人口統計学と疾患伝播のパラメーターを用いた数理モデルを構築したシミュレーションをした結果、その論文の結論として、農耕を始めて集団定住をするようになった後、性感染症の大流行に見舞われ、その結果として一夫一婦制の方が公衆衛生的な観点から集団の維持で有利となり、定着したと推測している(中野信子 『不倫』 文春新書 2018年 pp.40 – 41)。
「なるほどね。生まれてこの方、生活する中で自身が常にどこか不安で結婚もなかなか決心できなかった潜在的理由を垣間見る思いがしたわ。」
「時間を止めるな」エピソードⅦに続きます。