2023年4月19日
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直感に抗ったことにより失ったものと得たもの(2)

「早速来週の月曜か火曜はどうかな?」とLINEがきた。初対面が土曜日だったので、すぐにでも、という感じだ。この方の後に何件かお誘いが続いていたので、直近で決まっている方全員と会ってから考えるつもりではあった。しかし最初の「無い」という直感がありながらも、予想以上のお手当金額に揺らぎが生じ、保留させていただくことを伝えた。もちろん「ちょっと仕事が変則的なのでまた連絡します」といった、やんわりとしたありきたりな理由で。

 その方と2回目に会うことになったのは、1ヶ月半後ほど経ってからだった。その間に何名かとお会いする予定があったのもあるが、覚悟を決めて交際倶楽部の世界に飛び込んだにも関わらず、「お金のためだけに、好きでもなんでもない、しかも直感で“無い”としてしまった人とそういう関係になる」ことに抵抗があったからだ。

 2回目に会うことになれば、当然そういうことになるので、決定を先延ばしにし猶予期間をとっていた。

 もう少し何名かと会ってみれば、この方よりは「有り」な人と出会えるのではないかと考えていた。しかしどの方と会っても、提示金額は多少上下するものの大きな差はなく、この人なら!と思える人に出会えなかった。

 いや、正確には、“その時”を迎えることから逃げていた。

“その時”とは大人の関係になる時だ。

 いろんな思いや考えが入り混じった罪悪感と、単に「嫌だなあ」と思ってしまう気持ちをかき消そうと、必死になっていた。

 「きっと良い人」「優しそうだったし」「やりとりも紳士的だし」と、お相手の方になるべくポジティヴな感情ばかり向けられるよう、必死で自分を奮い立たせていた。

 そうして、実際にお会いする約束をとりつけ、心と身体の準備を当日までに整えた。

 

 初回とは異なり、食事はなくホテルへ直行だった。待ち合わせはホテルではなく別の場所で、そこから歩いて向かうようだった。

 食事をしないのは「お酒を飲むと出来なくなっちゃうから」という可愛い理由だった。初回でそう聞いたとき、何だか微笑ましかった。そのときはまさかこの人と本当にそういうことになるとは想像はしていなかったが。

 

 待ち合わせ場所からホテルまでは徒歩で15分ほどあったように思う。現地集合の方が目立たず良いのでは?とも思ったが、ホテルまで向かう間の会話が緊張解しにもなり、ちょうど良かった。付き合いたての初々しいカップルの設定で、会話を楽しむことに集中した。

 到着したのはラブホテル。フロントに人がおり鍵を直接渡される旧式のラブホテルだった。まあそんなもんかとあまり気にせず、部屋に入った。

 しばらく会話をして、そんな雰囲気になって、一緒にお風呂に入ってから、事に至った。最中は、必死で自身の気分を盛り上げようと頑張ったが、正直、かなりキツかった。体位を変えられると、まだ続くのか…という絶望に陥り、いろいろ触れられると顔を歪めずにはいられなかったので、気付かれまいと必死だった。

 頭の中と身体を必死で切り離そうとして、何とかラストまで漕ぎ着けた。いろんな意味で結構耐えたので、それに気付かれたのか、「ごめんね、ちょっとキツかったね」と気遣われてしまった。そしてしみじみと「僕の男としての自信を取り戻させてくれてありがとう」と感謝された。優しい人だ、と思った。ただそれだけだ。

 

 早くシャワーを浴びて帰りたかったが、風俗のサービスとは違うので、余韻を楽しむ時間もあって当然だと思い、会話を続けた。

 この方は家族についてよく語った。私生活は充実しているらしい。子どもについて無邪気によく語る。幼い子どもが母親に「ねえ聞いて!今日こんなことがあったよ〜」と報告するように。人は欲求を満たす前後には、子ども返りするのだろうか。

 

 一緒にお風呂に入って、着替えを終えると財布から直接取り出された札束を受け取った。「足りなかったら大変だから数えてね」と言われ、初回に提示された金額かどうかを確かめた。お礼を言って大切にバッグにしまった。

 会計時は見られたくないのか先に外に出ているよう言われ、ホテルの外で待っていた。一緒にタクシーに乗り込み、自宅の近所で先に降ろしてもらい、お別れした。

 

 一仕事終えた気分で、コンビニに寄り大好きなアイスをいくつか買って帰った。うがい薬でしっかりとうがいをして、先ほどいただいた札束が本当に入っているかバッグの中を確認した。時給に換算するとかなり良い稼ぎだ。1回で普段の給料の○割も貰えてしまうなんて。

 精神的なダメージは特にない。身体のある部分が少し痛いだけだ。とにかく、「時給○円のちょっとキツ目の仕事を終えた」気分だった。

 

 翌日にお礼の連絡を入れると、写真付きで返事がきた。何も感じなかった。

 

 意外と出来てしまうものだと思った。好きでも何でもない人とそういう行為を、お金のために。セックス はお金を稼ぐための手段の一つ。遣えるものは遣った方が世の中の為にも良い。そんな風に自分を言い聞かせ、次回もあの時間に耐えられるかどうかをシミュレーションしていた。

Writer: 
この特殊な世界に興味があり、多少危険なにおいを感じながらも飛び込んでみました。出会った方と、出会った方と向き合う自分を観察することが勉強になり成長につながります。 私のブログはお役立ち情報には程遠いただの体験談です。 ご興味おありの方はお立ち寄りください。

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