2022年11月22日
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1. 直感に抗ったことにより得たもの(1)

交際倶楽部を通じた出会いの初めての人とのデート。

お手当のことやその人そのものについては意外と期待したり想像したりすることもなく待ち合わせ当日を迎えた。

考えないようにしていたのかもしれない。これから起こり得ることや、現実はそんなに甘くないこと、何かを得ようとする時はそれなりの対価が必要であること。その覚悟が事前に必要であることは、頭ではわかっている。無理やり自分を納得させた、という方が正しいかもしれない。それでも、これから楽しいことが待っている、と自分を奮い立たせ、前向きな気持ちで当日を迎えた。下着から洋服から髪型まで、自分の中で一番綺麗と思える自分を作り上げたつもりである。

 

それはさておき、私は本当に昔から写真写りが悪く(元が絶世の美女であればこんな言い訳はしないだろう。たまに綺麗だとは言われる程度の顔面レベルの女の言い訳だという自覚はある)、到底お誘いがあるとは本気で予想もしていなかった。私を選んでくれた、というだけで有り難く、知らせを聞いた時少し温かい感情が沸いたことは事実だ。

 

待ち合わせはお昼の時間帯で、ランチをご一緒するかもしれないことを少し意外に思うと同時に、勝手に「今日は食事の後のその先まで求められることはないのでは」という安心感を抱いていた。

待ち合わせ時間の10分前に到着し、丁度の時間に電話連絡を入れた。倶楽部ネームを名乗るのは気恥ずかしさがあった。クラブで使っていた源氏名でもあったので、少し懐かしさはあったのだが。

 

電話が繋がり始めて聞いたその声から直感で「この人はないだろう」と感じてしまった。年代は私より一回り以上上であることは事前情報で周知していたが、年代的にまだ男性として見ることができるのではと自分を奮い立たせていた。しかし声からかなり年配の印象を受け、この人と恋人のようにいろいろすることをどうしても想像し難かった。しかし声だけで「有・無」を判断するのは早過ぎるため、最初に感じた「無」の感じを一旦打ち消し、到着まで待ってみた。

声をかけられ、顔が確認できた時、やはり「ない」と確信してしまった。その方には何も非はない。私を何らかの理由で気に入ってくださり、お金をかけてまで会おうとしてくれた。本当に感謝する。ただ、私がその方に男性としての魅力を感じられない。ただそれだけだ。その事実はどうしようもない。しかし、その場で「ごめんなさい。今回はなかったことに」なんて言えるはずもなく、最初の自分の感じたことをひとまず打ち消し、「今日は素敵な男性とのデートを楽しむんだ」と気持ちを切り替えた。

 その日私は、これまで培った経験の中で獲得した“心から楽しんでいる時に出る自然な笑顔”を全開にし、男性に楽しんでいただけるように振る舞った、つもりだった。

しかしどれほど年齢や経験補重ねても、初対面の方と心からリラックスして食事を楽しむということは至難の技であると改めて実感する。

コロナ禍ということもあり、テーブルにはアクリル板が立てられ、周囲のざわめきも加わり、会話の最中も互いの声が届きにくい。初対面というハードルの上に物理的なハードルも立ちはだかり、時々互いに聞き返すという行為が気まずさを生み出す。沈黙が長引く前に質問を思いついて話しかける等、通常以上の労力を必要とされた。それは私だけではなく、お相手もそうであったであろう。

ランチのコース料理を終え、2軒目に早い時間から営業しているバーに向かうことになった。ランチ中の会話は、当たり障りのないもの(倶楽部に入会してどれくらいか?出身地は?等)が多かったが、途中「ピルは飲んでるの?」という質問が挟まれたことが気にかかった。「え?」と聞き返すと、「いや、肌が綺麗だからね。ピルを飲むと肌が綺麗になると聞いたことがあるんだよ」と返ってきた。直感的に、“中”で出しても大丈夫かどうかの確認であるということは悟った。特に嫌な気分になったわけではない。そういうことね、と理解しただけである。

 

2軒目に向かう途中、具体的なお手当の話を持ちかけられた。

「あなたなら食事だけなら諭吉2人、大人なら10人で考えているんだけど、どうかな?」

 こんなにストレートに交渉されるとは思っておらず、わかりやすくて有り難かった。「10回で諭吉100人だよ。少しでもサポートになれば良いなと思っているんだ」とたたみかけられた。私と1回食事をすることと、そういう関係になることに、この人はこの金額の価値があると考えてくれているのか、と頭の中で理解した。有り難いサポートだと素直に思った。「次はいつ会えるか?こちらはいつでも会える」とやや前のめりにになられていたので、「また予定を確認してから連絡します」とひとまず当たり障りのない返事をした。

 2軒目のかなり良い雰囲気のバーでは、お酒も入り私の緊張も解れ、側から見れば恋人同士のような雰囲気が作り上げられたと思う。

 帰り際に財布から出され、“交通費”としてそのまま受け取り(確かに先程宣言された食事だけの場合のお手当額)、店から出て少ししたところで解散した。

 

 ランチはとても美味しく、また純粋に来たいと思えるレストランだった。2軒目のバーも、何度か行ったことがある店だったが、いつ行っても雰囲気が良い。男性に対しても、特に嫌な点はなく、最初に「ないな」と感じたことと(男性として見られないこと)、「ピルは飲んでるか」という質問以外に気がかりなことはなかった。ただ、女性に慣れている、というよりは、優しく包み込んで持ち上げられているという印象だった。大変失礼ながら、この男性はきっと女性をお誘いしても食事以上の関係になることはあまりないのではないかと思った。まだこの副業を始めたばかりの私でも、提示された金額は、相場よりは高めなのではないかと予想していた。

 

 金額に目が眩んだことに嘘はつけないが、その金額の対価に見合った“仕事”ができるのか、そしてする気になれるのか、少し考える時間を必要とした。

Writer: 
この特殊な世界に興味があり、多少危険なにおいを感じながらも飛び込んでみました。出会った方と、出会った方と向き合う自分を観察することが勉強になり成長につながります。 私のブログはお役立ち情報には程遠いただの体験談です。 ご興味おありの方はお立ち寄りください。

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