山田さんと由芽ちゃんのお話の続きです。
前編は→こちら。
山田さんは父親が脳卒中で倒れて、会社にかなりの借金があることも判明し、由芽ちゃんにこれまでのように豪華なレストランや高額のお手当てを渡すことが出来ない、だからもうデートすることが出来ない旨を伝えました。
由芽ちゃんは、そのラインを読んで、まず、本当に山田さんはお金が無いのか、そこを確かめる必要があると思った。
嘘をついて自分を試しているのかもしれないし、1時間か2時間のお食事デートで10万はさすがに高いと気が付いて、急にケチになっただけかもしれない。
支払うポテンシャルがあるのなら、自分のパパ育成能力で、山田さんの気が変わることだって有り得る。
山田さん、50才の童貞で、普通の女性にとっては気持ち悪いかもしれないが、由芽ちゃんの目にはそうは映らない。
根は良い人だから、ストーカー化することは無いだろう。
女性との交際経験が無いので、いろいろ誘導しやすい。
良案件だ。手放すのは惜しい。
「ファミレスのようなところしか行けないけど」とデートを躊躇する山田さんに「それでもいいです」と懇願して、とにかく会うことになった。
実際に会って聞いてみると、どうも話は本当のようであった。
人気の少ない店内で、他のお客さんに気付かれないように注意しながら、由芽ちゃんは号泣した。
「せっかく仲良くなれたのに、お金が無くなったからもう会えない、支援できないなんて、そんなにあっさり別れ話を切り出されるのが寂しくて悲しい。それって、私たちは結局お金だけの関係だった、私がまるで山田さんからお金を貰う、それだけが目的だったって、山田さんがそういう風に考えていたってことじゃないですか。私は山田さんが良い方だと思ってお会いして、これまでの学費のかなりの部分を支援してもらって、本当に感謝しているし、だけどこの関係がこんな風にあっさり終わってしまうなんて、とても辛い。私は今月中にまた来期の学費を支払わなくちゃならないのに、もう山田さんに頼ることは出来ないんですね。山田さんとの関係が終わってしまうのも辛いし、来期の学費をどうしようかと思うと、絶望的な気持ちになってしまって、今はとにかく悲しいです」
そういったことを明確に伝えながら、とにかく泣いた。
泣くのは得意だ。昔の悲しかった記憶を思い出せば、由芽ちゃんはすぐに泣くことが出来る。
山田さんはたじろいだ。
女の子を泣かしたことなんて無いし、由芽ちゃんが、自分と会っていたのはお金だけが目的ではないと明言してくれている。
女性にこんなことを言われたのは初めてだ。
狼狽して、かつ感動した山田さんはこう由芽ちゃんに言った。
「分かったよ。由芽ちゃんのそんな気持ちに気が付かず、不用意に傷つけてしまった僕が悪かった。由芽ちゃんは僕のことを単にお金をくれるおじさんとしてでは無く、好意を持って見てくれていたんだね。嬉しいよ。由芽ちゃんのような綺麗な女性にそんなこと言われたら、僕だって男だ。来期の学費だけは、支援してあげるよ。これは本当に僕の真心です。その証拠に、もうデートはしなくてもいい。学費分だけ振り込んであげる。だからもう泣くのは止めて。お願いだから。」
由芽ちゃんは泣くのを止めた。
ちゃっかりしたものだ。
さて考察。
由芽ちゃんのこの交際の終わらせ方、どう思いましたか?
女性の視点から見ると、由芽ちゃんは上手いことやって、最後に来期の学費をせしめた、天晴れパパ活女子っていうことになることでしょう。
もう一方、山田さんの視点から見てみてください。
山田さんは、最後に学費を支援させられて、嫌だっただろうか?
由芽ちゃんが山田さんの男を立てた、そうは考えられないですか?
山田さん、会社が傾いてしまって、この先の人生で、女性にモテることがあるとは思えない。
婚活に再チャレンジしたとしても難しいでしょう。
そんな山田さんの記憶の中で、由芽ちゃんとのお食事デートは、美しく輝かしいものとなるはずだ。
山田さんが「お金が続かないからもう会えない」と由芽ちゃんに伝えて、由芽ちゃんが未読削除やブロックで切ってしまっていたら、結局お金だったのかと、思い出が汚れてしまう。
最後に由芽ちゃんが泣いて、それで山田さんが男気でもって最後の支援をした、この形で締めくくると、山田さんの中では、卒業までの面倒はみてあげられなかったけれど、出来る限りのことをしてあげた、やり切った、という悔いの無さで終わるだろう。
お金の動きだけを見ると、山田さんは単にカモられただけのようだが、由芽ちゃんが山田さんから最後の「自発的」支援を引き出すことで、山田さんの中には良い思い出が残った。
山田さんは、この後の人生を、美しい由芽ちゃんに支援をした、その誇りだけで生きていくだろう。
由芽ちゃんがしたのはそういうことだ。わかるかな?
由芽ちゃんは、前編で記したように、以前ストーカー被害にあってとても怖い思いをした。
だから、交際の終わり方には、とても神経を使う。
たとえどんな嫌なパパさんであっても、自分からブロックはしない。
相手を怒らせるかもしれないからだ。
どうしても切りたい場合は、デートの際にあえて不愛想な態度を取ったりしてわざと嫌わせて、相手から交際を終わらせるように仕向ける。
他にも「貴男のおかげで夢が叶いました。これまで本当に有難うございました!」と連絡して終わらせるハッピーエンド方式というのもある。
相手が「良かったね」と祝福して暖かく見送らざるを得ない=円満に別れる、という形に持っていく手法だ。
とにかく、男性が逆恨みしたり、ストーカーになったりしないように、別れ際には最大限の注意を払う。
交際の終わらせ方の美学。
由芽ちゃんとしては、必死にパパ活のリスク管理を行ってきた一環なのだが、継続パパさんの最後の仕留め方は、もはや芸術的ですらある。
パパ活は出会いでは無く終わらせ方こそが肝要というお話でした。
2022年8月22日
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Writer: マックさん
ユニバでの登録名も「マックさん」です。登録支店は名古屋。
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