女の無表情は、何よりも本音を物語っている 7

前回のコラムの②についての説明からの記事になります。女性の表層の変身から深層の変心を読み取る原則の②を理解するためには、エレベーターの中を頭に思い浮かべてもらうのがもっとも手っ取り早いと思います。
もしあなたが、まださほど親密な関係にはないガールフレンドと、二人だけでエレベーターに乗ったとしましょう。そのとき彼女が、いつもより積極的に話しかけてきたとしたら、あなたは男性として意識されていると思って、まずまちがいないと思います。
人間は、閉鎖された空間に身を置くと、心の均衡を失いがちになるものです。ことに女性は、比較的親しい間柄の男性と二人だけでこうした密閉空間にいる場合、「何かされるのでは・・・・・・」という期待と警戒がないまぜになった心理を抱く傾向にあるのです。
そして、この深層をカムフラージュするため、表層が”おしゃべり”に変化するのです。しかしいずれにしても、相手の男性を”男”として意識していることに違いはない分けです。いかがでしょうか。
「欲望そのものの強さは変わらないが、その欲望を強く意識させる場合」という原則②の意味が、これでおわかりいただけたと思います。 私は、この原則が示す、女性の表層と深層の因果関係を、うまくドラマの中に盛り込み、劇的効果をつくりあげていたのが、小津安二郎監督であったとかと思います。
『麦秋』や『東京物語』など、数々の名作で広く海外にもその名の知られる小津監督は、 お互いに好意を抱く男女を描くさい、けっして大袈裟な表現をもちいなかった監督でも知られております。たとえば、ある男性が女性に対して、自分が抱いている好意の意思表示をするという場合も、それを聞く女性の顔は、かえって無表情になる場面があります。
これを見た男性は、「やっぱりダメだったか」と落胆するのですが、あとになって、その女性が自分に対して同様の好意を抱いていたことがわかる分けです。私は、小津監督のこうしたドラマづくりに触れて、さすが女性の心理を描く名人といわれるだけのことはある」と、大いに感心したものです。
一般に女性は、いくら相手の男性に好意を抱いていたとしても、それをストレートに表現することを避ける傾向があります。こうしたことから、男性の好意の意思表示に対しても、かえって嬉しを押し隠した無表情で応えるケースが少なくないのです。
だから、この無表情を額面どおりに受け取ると、「私もあなたが好きです」という彼女の深層を、まったく逆に解釈することにもなりかねないのである。女は男の関心度をはかるため、あえてもってまわったような変化を見せることがある者なのです。
■女は男性の関心度をはかるため、あえてもってまわったような変化を見せることがある
女性に恋人や憧れの男性ができたという場合、表層に表われるもっとも大きな変化は、趣味など関心の向かう方向に関するものであろうと思います。
ある新進の女性翻訳家が、これも少壮の天文学者と恋仲になった話題がありました。 彼女はそれまで、天文のことはまったく興味がなかったのですが、彼と交際をつづけるうちに、宇宙の神秘にすっかり魅せられてしまい、天体望遠鏡まで買い込み、毎晩星をながめるようになったというのです。
そしていまでは、天文学の専門書を翻訳するところまで、その知識は広がったそうです。こうした彼女の行動は、心理学でいう、アイデンティフィケーション(同一視)の一種であろうと思います。 つまり、無意識のうちに、自分を彼と同一だと思い込もうとしているわけです。
そしてこれは、表層変化から深層の変化を読み取る原則の⑥ 「女性の深層に外部から何らかの影響が与えられた場合」にほかならないということになるのです。
では最後に、原則④の「女性が、自分の変化を相手に見せることによって、相手の何かをはかろうとする場合」について触れてみたいと思います。俗に「探りを入れる」などといいますが、原則④は、この典型といってよいと思います。
要するに、表層の変化でフェイントをかけ、男性の本心を探ろうとする意図が、女性の深層にあるわけです。たとえば、恋人や夫などと些細なことで口論しただけなのに、すぐ「別れる」という言葉を口にする女性がいます。 もちろんこれは、本心からではないわけです。
それが証拠に、「そんなに言うなら」と、男性の側から別れるそぶりを見せようものなら、こうした女性のほとんどは、あわてて前言 を撤回する場面の方が多いです。 そんなことならはじめから言わなければよいものを、というのは、あくまでも男性の理屈なのです。
彼女たちは、「別れる」という言葉を口にすることで、恋人や夫に胸の内の不満をぶつけ、ひいてはその反応によって自分に対する愛情の深さをはかろうとしているだけなのです。 つまるところ、「別れる」とは、「別れたくない」の逆説的表現にほかならないわけです。
次にご紹介するフェイントは、この「別れる」よりいささか手が込んでいる場合です。 女性の多くは、自分の髪形や服装の好みに強い執着心を持っているから、めったなことでこれを変えようとはしない者です。 したがって、もし髪形や服装をガラリと一変させたとすると、その女性の深層に、よほどの変化が生じたことになる分けです。
だがこれほどではないにしろ、女性は時折り、前髪の分け方や服につけるアクセサリーなどを、さりげなく、そしてほんのすこしだけ変化させることがあります。 これも、ガラリ一変ではないにしろ、変化には違いないわけです。
こうした表層の変化から導き出される女性の深層心理は、「自分に対する相手の男性の関心度をはかる」というものなのです。端的にいえば、自分を認めてもらいたいという欲求が、「髪形や服装 のさりげない変化を示すことにより男性の注意を喚起する」という形で表現されているものなのです。
いかにももってまわったやり方ではありますが、これは女性の深層が、それだけ厚い表層によっておおわれている証拠といえよかと思います。
■ 変身から女の本性を見抜く実例集をピックアップして見ました
※女性が髪形や服装をすこし変えたときは、相手の男の自分への関心度をはかろうとしている。
※女性の趣味が変わったら、好きな男ができたとみていい。
※女性がタバコの銘柄など慣れ親しんだものを変えるのは、相手の男との関係を一段進んだものにしたいというメッセージとみていい。
※女性が急に金を派手に使うときは、夫や恋人に強い不信感を感じている。
※女性が酒を飲むときは、不満を発散させるためである。
※エレベーターなど閉ざされた空間で急に多弁になる女性は、相手の男を男性として意識している。
※女性が急に多弁になったときは、知られたくない秘密を持っている。
※女性があいづちを頻繁にうつようになったら、男の話の内容よりも違ったことに関心をもちはじめた証拠である。
※女性が一段と声のトーンを高くするときは、自分のわがままを通したいと思っている。
※男の好意を知って女性が無表情になるのは、相手に対する好意を露骨に表現するのをはばかっているからである。
※女性が同性とのグループ行動をしなくなったら、男ができたか、男性問題で悩んでいると考えていい。
※女性が髪を短く切ったときは、"変心願望"を示している。
※会うたびに服装の好みが変わる女性は、情緒不安定で、現実逃避願望を抱いている。
※女性が男に対して急にやさしくなったときは、心中になにかやましいことを隠し持っていることが多い。
※女性が必要以上の敬語を使い始めるのは、"あなたに関心がなくなった”という意思表示。
いかがでしょうか。思い当たる節はありましたでしょうか。
■ 男をじらし、コケットリーを演出する女の "NO"
「いやよいやよも好きのうち」とは昔から言い古された言葉です。女の口にする否定語、あるいは拒絶するそぶりが、かならずしも額面どおりに受けとれないものであることは、恋愛経験のある男性なら、誰もが身にしみて承知しているものです。
実際男に向けられるこうした女の否定表現ほど、曖昧模糊としてとらえどころのないものはないといえます。たとえば、いささか品位を欠く例かもしれないが、男にはじめてセックスを迫られたとき、女はほとんど例外なく拒絶のゼスチャーを示すものです。
たとえその男に好意を抱き、身をまかせる腹づもりがあったとしても、最初のうちは「いや」を連発したり、逃げまどってみせたりするのがふつうです。こんなときの女は、”NO” のしぐさをすることによって男をじらし、相手の欲望のボルテージを高めようとしているわけです。
つまりは男の誘いに対して、婉曲に”承諾”の意思表示をしているわけです。これは女性一流のコケットリー(媚び)の演出であり、一種の動物的本能にもとづく行為といってもいいだろうと思います。
事実、イヌやネコなども交尾の際には、雌はいやいやのしぐさで媚態をつくり、雄をじらして挑発する光景はテレビの動物番組でよく目にします。
ここで雌にちょっとぐらい拒絶のポーズをされたからといっておめおめと引き下がるようでは、雄としては生命力に欠けることおびただしい事になります。 そんな障害を乗り越えてくるようなたくましい雄でなければ、「種の保存則」に適合せず、雌としても安心できないという種の保存本能なわけです。
もっとも、人間の女性が示す”NO” が、こうした雌としての本能的な「じらし」を表現するばかりにとどまらないのはもちろんのことです。 人間の行為はすべからく心理と表裏一体になっているのですから、当然そこには、さまざまに屈折した女性の深層心理が知らず知らずのうちに反映されているはずです。
その意味では、女性が折り折りにみせる”"NO”のポーズは、その女性の深層を読みとるためのたいへん貴重な手掛かりともいえるわけです。
その道の大家としても知られる作家の川上宗薫氏は、「女は、言い回しの微妙なニュアンスの違いや、イントネーションのわずかな変化だけで、何種類もの”いや”を使いわけることができる」といっておりました。
これはとりもなおさず、女の”NO” が画一的な否定の表現ではなく、状況に応じてさまざまに意味が変化するものだというのは、まさに氏の言うとおりだろうと思います。
こうした女性の”NOの深層心理”は、次の三つのパターンに大別できるだろうと思います。 ①男の意志や誠意を確かめ、試す「確認」の”NO” ②自分の欲望を隠匿し、カムフラージュする「屈折」の”NO” ③自己を弁護し、アリバイづくりをする「体裁上」の”NO” です。
これらの”NO"の説明は次回のコラムで説明したいと思います。『竹取物語』には、男の誠意を試そうとする女性心理が描かれていることは良く知られています。 そこで次回は『竹取物語』には、男の誠意を試そうとする女性心理が描かれている。と題してのお話から始めていきたいと思います。