恋愛ワクチン 第八十六話 熟成(その2)

交際クラブは「疑似恋愛」を楽しむところと言われる。
「疑似恋愛」っていうのも、分かったような分からないような言葉だ。
そもそも恋愛とは何か。
男女が性的に惹かれ合うことだが、これに似た関係性と言うのは、恋愛の他にも無いわけではない。
「情」とか「信頼」とか「尊敬」。
情って言うのは育むのに時間がかかる。
尊敬出来ない相手を尊敬するのは、恋愛よりも難しいかもしれない。
いちばん手っ取り早いのは、信頼関係の構築である。
約束を守って安心させること。
安心させて信用を得て、それでもって恋愛関係の代用とする。
疑似恋愛とは、例えるなら、大豆で作った代用肉だ。
それがマックさんの解釈である。
そういう意味で、交際初期にお手当てを含めた取り決めを明確にして、これを守る姿勢をはっきりと示すことは大切と言える。
マックさんは、ラブホに興味のある美也ちゃんを、襲わずにただ連れて行ってあげるだけという約束を守ることで、信用の実績を作ろうと考えたのであった。
前の男性が約束を守ろうとしなかっただけに、差が際立って好都合でもある。
タクシーでマックさんの行きつけのラブホに行って、適当な部屋を選んで二人で入室。
美也ちゃんは珍しそうに興奮して、キラキラした目で室内を見渡した。

美也ちゃん「想像してたより広いです」

マックさん「ここは、昔バブルの頃に出来た建物だから、どの部屋も間取りが広いんだよ。ちょっとしたシティホテルよりも、この手のラブホの方が、ゴージャス感があったりするよ」

美也ちゃん「もっとエロい感じかと思ってました。ベッドが丸いとか」

マックさん「そういうお部屋もあるけどね。枕元にあるこれ、コンドーム。見たことある?」

美也ちゃん「無いです」

マックさん「じゃあ持っていきなよ。女の子も自衛のためにバッグに入れておいたほうがいいし。二つあるから一つをあとで開けて、どんなものか観察してみるといいんじゃないかな?」

そんなこんなで、その日は解散。
お部屋の滞在時間は10分くらいだろうか。
約束通り、美也ちゃんの体には一切触れなかった。
退室してフロントで清算していると、奥からスタッフの女性が怪訝そうに声を掛けてきた。

女性「もうお帰りですか?」

マックさん「いや、今日は、この娘がラブホに来たことが無くて、どんなところか見てみたいって言うんで連れてきただけだから」

ちょっと体裁が悪い。まるで女の子を部屋に連れ込んだのはいいが、いざとなって断られて帰ろうとしているみたいだ。
美也ちゃんとは、他にもいろんな話をした。
処女であるけれど、必ずしも卒業を焦っているわけでは無いこと。
1人エッチは小学校の頃からしていて、けっこういやらしい妄想もすること。
セックスに興味は大いにあるけれど、痛そうで怖いということ。
マックさんはひらめいた。
処女の子をただ卒業させるのは、もう十分数をこなした。
初回デートが、ラブホ見学っていう男性側にちょっと我慢が必要なイベントから始まったことだし、美也ちゃんの場合は、処女のままエッチなことを色々経験させてみたらどうだろうか?
処女の「熟成」である。
美味しくなるかもしれない。
処女膜を温存したまま、めっちゃエロい娘に育成するのだ。
ペニスを触らせて咥えさせ、しかし挿入はせず、「挿れてみたいけど、痛いのが怖い、しかし挿れたくて仕方が無くてもどかしい」、そんな濡れ濡れ娘に仕上がったら楽しいじゃないか。

マックさん「次のデートも挿入はしないから、またラブホに来ようか?」

美也ちゃん「はい、いいですよ」

マックさん「一年前に交際クラブで処女卒業した沙紀ちゃんっていう女の子がいるから、その娘呼んで、いろいろお話も聞いて、そのあとその娘と僕がセックスしているところ、美也ちゃんに見せてあげるっていうのはどう?」

美也ちゃん「いいんですか?その子がいいなら、ぜひお願いしたいです!」

さて当日、沙紀ちゃんと美也ちゃんと3人でまずはお食事。
女の子複数とのプレイは、マックさん何度もこなしている。
女の子同士は相性がある。まずはその確認が大切だ。
もともと沙紀ちゃんは、「性的対象は男性だが、恋愛対象は女性」っていう、ちょっと変わった娘だ。基本、女の子は大好きである。
沙紀ちゃんが、交際クラブで処女卒業したのは、まさにこの性癖が理由で、同世代男子にはまったく恋愛感情が生じない。
しかしペニスには欲情する。だから、割り切ってサクッとエッチできる交際クラブを選んだ。
女の子にもいろんな事情がある。
美也ちゃんはというと、こちらは極めてノーマルな女子トークでもって、すぐに同世代女子と仲良くなるタイプのようで、根がエッチなのは二人とも同じだし、BLのコミックの話などで大いに盛り上がった。
ご飯を食べて、ラブホに移動。
せっかくなので、今回はグレードの高いお部屋にした。
3人での休憩料金が5万円くらい。
丸いちょっとしたプールのような風呂があって、ジャグジーやら、照明を落として綺麗な色で水面を彩ったりとか、いろいろ楽しめる。
そこで美也ちゃんと沙紀ちゃんにキスさせて、次いで潜望鏡のように湯面から出したマックさんのペニスに二人で両側から王様フェラさせて、しっかりムードを盛り上げる。
ちなみに、沙紀ちゃんは挿入予定なので、お手当は5万円。
美也ちゃんは、挿入しないので、少し抑えて3万円。
この条件で諒解してくれた時点で、美也ちゃんの処女が本物だって言う確度は、かなり高まったと言える。
処女詐欺目的の嘘なら、こんな条件は飲まないだろうからだ。
To be continued.

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