恋愛ワクチン 第三十三話 ブランク

ジョーさんが新しいコラム記事をUPした。

「しりとりで綴る奮闘記」というものだ。

次は「ぶ」から始まる表題の記事らしい。

ジョーさん、最近コメント欄は閉じてしまったし、マックさんの記事にもコメントを寄せてくれなくなった。

しかし記事中には「マックさん」が登場している。

「クヤシイです!」と書いてはあるが、あまり悔しさは伝わってこない。

嫌われているわけでもなさそうだ。

マックさんに絡まれると、自分のペースが崩れるので、あえて繋がりを断ったのだろうか?

孤高を選んだか。

しかし、ジョーさんは寂しがり屋のはずだ。

冬眠中のマックさんをわざわざ召喚したくらいである。

だから、こうして別記事を立てて、ジョーさん、ジョーさんと声掛けする程度なら、気を悪くはしないだろう。

それでマックさんもしりとりに乗っかって、「ぶ」で始まる表題で一本書くことにした。

ぶ・・ブラック、文学、ブルーラグーン(青いサンゴ礁)・・

そういえばしばらく南の島に行ってないなあ。

スキューバダイビングも昔は好きだったけどブランクが長くなってしまった。

ブランク・・そうだ、「ブランク」にしよう。

マックさんは、二年ぶりに会ったカンナちゃんのことを思い出した。


カンナちゃんはユニバースで出会った娘ではない。

その頃マックさんはユニバースの他に二つの交際クラブに入っていた。

カンナちゃんは、その一つに、たった一週間入っていて、たまたまマックさんがオファーした娘だ。

マックさんとデートしてすぐに退会してしまった。

これにはカンナちゃんなりの理由がある。

カンナちゃんはハーフなのだ。

良い意味でかなり特徴的な顔立ちである。

マックさんの住むエリアで、もしも知人に見つかれば、他人の空似と言い逃れが出来ない。

だからマックさんからオファーがあった後、パパは一人いれば十分と考えて退会してしまった。

慎重とも言えるが、どことなく考えが幼くもある。

パパなんて複数いてちょうどいいくらいだ。

一人見つかっただけで退会しなくてもいいのに。

マックさんはその時はそう思った。

しかし実はカンナちゃんは、パパという名の恋人を探していたのかもしれない。

そう気が付いたのは、Novemberさんとデートして、見た目は派手だが性格はおとなしいハーフの娘の恋愛事情を聞いてからだった。

カンナちゃん、マックさんと会ったときはまだ19才だった。

男性経験はゼロではなかったが、決して多くは無かった。

そんなカンナちゃん、マックさんとデートするようになって半年ほどしたら、少し太り始めた。

お肉が好きでたくさん食べる。

外人の遺伝子なのか、太ももと腰に来るようだ。

20才までは妖精のように美人だけど、これからお肉が付いていくんだろうな。

前から書いているが、マックさんは腰の細い娘が好きだ。

マックさんはカンナちゃんをデートに誘わなくなった。

カンナちゃんからは、哀願するようなラインが2回くらい来たが、その後は途絶えた。


2年たったある日、フェイスブックのメッセージと、ショートメールの二つに、カンナちゃんから連絡があった。

「覚えていますか?二年前お会いしたカンナです」


懐かしい。

こちらから誘わなくなった別れなので気まずくはあるが、お茶くらいはしてもいい。

体型が変化しつつあったハーフの娘が、その後どう仕上がったのか好奇心もあった。

二年ぶりのカンナちゃんを見て、マックさんはびっくりした。

以前よりも腰が細く綺麗になっていた。

モデルさんのように美しい。

あ、レモンさんは会ったことがあります(^^)。

あの娘です。美人だったでしょ?

聞けば、マックさんに誘われなくなったのが、自分が太り始めたせいだというのは、気が付いていたようだ。

一年間は悲しかったけれど、次の一年で頑張って10㎏痩せたとのこと。

今は本当に野菜しか食べていない。

毎日ジムにも通っている。

これなら大丈夫というところまで体を整えて、それでもなかなか勇気が出なかったが、思い切ってマックさんに連絡したのだそうだ。

ショートメールだけだと見落とされるといけないので、わざわざマックさんのフェイスブックを探してメッセージも送ってきた。

もちろんお茶の後はホテルに移動してエッチした。

カンナちゃんにとって、マックさんは初めての男性ではなかったが、絶頂はマックさんが教えた。

高校を卒業してからずっと働いている。

出会いの無い職場なので、マックさんと会わなくなって以来、二年間エッチしていない。

しかし、交際クラブに再登録することも、流行りのアプリで相手を探すこともせず、ひたすらマックさんにまた会って貰いたくて、ダイエットとジムに励んだのだそうだ。

「マックさん、またご自慢ですか。もう勘弁してくださいよ」

ジョーさんの呟きが聞こえてきそうだ。

ここから、オチに入るので、もう少し我慢して読んで下さい。


マックさんは今、とても気になっていることがある。

カンナちゃんには、相変わらず都度5万円渡しているのだが、もしマックさんがこのお金を渡さなくなったら、カンナちゃんはマックさんとエッチするだろうか?


似た状況になっている娘が実はもう一人いる。

前にも書いた、処女から育てて、まだマックさんしか男を知らない娘だ。

エリカちゃんという。

もうじき開通から一年になるのだが、信じられないほどイキやすい体に仕上がってしまった。

一人暮らしなので、呼べば必ず来る。

本当にすぐに来る。

一週間マックさんから連絡がないと、「我慢できません、お願いですから会ってください」とラインが入る。

この娘にも都度5万必ず渡しているが・・もしお金渡さなくなったら、会ってくれなくなるのだろうか?


気になる。



しかし、マックさんはお金は絶対に渡す。

怖いからだ。

「怖い」には二つの意味がある。

一つは、前から書いている、「ただより高いものは無い」という意味での怖さだ。

本気で恋愛モードになってしまいかねない。

もう一つは・・この幸せな夢が覚めてしまうのかもしれないという怖さである。

もしも、カンナちゃんの二年のブランクが、マックさんという男性ではなく、都度5万円というお金のほうに重きが置かれていたとしたら・・たとえ真実がそうであったとしても、絶対に知りたくない。

お手当てを払い続けるというのは、夢を見続けるための保険のようなものだと思う。

あるいは暖炉の火を絶やさないための薪。

カンナちゃんにしろ、エリカちゃんにしろ、マックさんとの関係が、お金なのか、恋愛(もしくは性愛)なのかは、自分でもよく解っていないのではないだろうか。

女性の恋愛(もしくは性愛)を燃え上がらせる薪がお金だともいえる。

そう考えると、お金って、男女の関係性を冷ましもするし、温めもする。

絶妙な調節装置なのかもしれない。

対極のようで、意外と切り離せないものなのかもしれませんね。
 

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